
ロシア正教会の聖歌集です。聴いていて
鳥肌が立つほどの美しい四声の男声コーラスです。
浅はかな知識で申し訳ないのですが…キリスト教というのは、大きく分けるとカトリック、プロテスタント、そして東方正教会系の3つに分かれると思います。この場合の「東方」というのは、西洋か東洋かではなくって、西ヨーロッパか東ヨーロッパかという意味。僕らが結婚式の時なんかに耳にする讃美歌は、東方ではなくって西寄りの音楽です。で、すごく分かりやすい西と東方の教会音楽の違いは、伴奏の有無です。東方正教系は、無伴奏なんですよね。東方正教会というのは、ある側面で商売化してしまった一部カトリック教会の歴史と違って、すごくストイックで、本当に救いを求めているような感じ。この宗教そのものの在り方と相まって、無伴奏合唱が恐ろしく静謐で荘厳な感じ。西の聖歌がどこか明るい感じなのに対して、ロシア正教会系の聖歌はどこか暗く、そして荘厳なんです。いつか
ロシア民謡のディスクを紹介した事がありますが、これはロシア文化に通底するところなのかも知れませんね。
東方正教会というのは、結局はローマ・カトリック教会みたいな総本山と支部みたいな感じじゃなくって、あくまで自分たちが信仰してきたものを大事にして、山村にひっそりと作った教会や洞窟で祈りを捧げているという独立独歩みたいなイメージが僕には強くて(あくまで僕のイメージです、実際はどうなんでしょうか)、だからローマ正教系とかブルガリア正教とかグルジア正教とか、一本化されずにそれぞれバラバラにやってる感じです。で、ローマ正教系の聖歌を収めたこのディスクは、特に「祈り」という側面が強いんじゃないかと思います。言葉がすごく重要という感じなんですよね。旧ソ連時代って、宗教が弾圧されてたじゃないですか。だから、キリスト教徒は山に隠して作った教会に密かに集まって、祈りを捧げていたんだとか。なんか、そういう心から出てきた祈り、みたいなものをニワカの僕ですら感じちゃうぐらいの凄いコーラスなんですよ。教会音楽から発展していたクラシックの歴史なんかまったく無視して、5世紀とか6世紀の教会音楽がそのまま残っている感じ。しかも、それを音楽家がやっているというより、ロシアの森の奥で、それがずっと歌い継がれてきた、みたいな凄さを感じます。
東方正教会系のものすごい合唱を聞きたければ、このCDは絶対の一枚だと思います。僕は、この荘厳さに、なんかまるで宗教的な感動にも近いような心を打たれ方をしてしまいました。あ、そうそう、このCDですが、すべての聖歌のロシア語歌詞と英語歌詞(もうひとつ、何語か分からない歌詞がついてます。ラテン語?)、それにロシア正教歌に関する詳しい解説(英語やロシア語など)がついてます。これが素晴らしすぎるので、MP3のダウンロードではなくって、ブックレットがちゃんとついているCDでの購入をおススメします(^^)。
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