
現代のクラシック・ピア二ストには、とんでもない天才が3人いまして、その筆頭がグレン・グールド。グールドに比肩する人を挙げるとすると、少し前の時代ならとリストとかショパン、大昔はモーツアルトという事になるんじゃないかと。リストやショパンやモーツアルトは自演の録音が残っていないので比較できませんが、ある時代の中で周りから極端に飛び抜けた存在という意味では、彼らに匹敵するほどの衝撃だったんじゃないかと思います。どの人も、「楽譜を見た直後に、いきなり暗譜で一音も間違えずに演奏してしまった」とか「人の演奏を聴いた後に、その曲を全く同じように演奏した」とか、信じられないような逸話を持っている人ばかりです。。この本は、ピアノの世紀の天才・グールドの伝記本で、巻末のディスコグラフィーを入れると600ページを超える極めつけのグールド本です。
ページ数は多いものの、読みはじめたら面白すぎて一気に読んでしまいました(^^)。。 グールドというのは、少し変わった人としても有名で、すごく神経症的な所があるし、奇行といっていいような行動もあったみたいです。自分の肩にポンと手を置いたピアノメーカーの人を相手にとんでもない額の訴訟を起こすとかね(^^;)。。天才でかつ異常行動を起こす点だけでも、面白い本になるに決まってるんですが、しかしこの本、面白おかしく伝える為に書かれたんじゃなくって、50歳で死んでしまった彼の遺品を整理する為に、遺族が「この楽譜はどういう価値を持つものなのか」とか、そういうのをはっきりさせる為に、色々と調べて貰うために伝記執筆を依頼したというシロモノ。だから、嘘偽りがなくって、美辞麗句ばかりじゃなくて結構グールドさんの痛い所も克明に描かれていて、そこがドキュメンタリーとして面白いです。しかし私は、音大にまで進んだくせに、このピアニストの良さがいまだに分からない有り様で(でも言い訳させてもらうと、アルゲリッチは凄いけどグールドはどうなのという級友は結構いた^^;)、読んでないといけないこの本を最近まで読んでなかった。。で、読み始めて…いやあ、凄い人生だ。。もう、子供の頃の逸話からして異常、最初から絶対音感はあるわ、10歳までにバッハの平均律クラヴィア1巻全曲をマスターしているわ、会話しながら他の音も聴く事が出来るわで、才能のあり方が
人より優れているんじゃなくって、人と違う。天才とはかくあるべしという感じでビビりまくりでした。。グールドさん、天才とまで称された人なのに、しかも全盛期と言っても良い30過ぎという年齢で人前で演奏するのを突如やめてしまったんです。で、以降はひたすら録音生活に入っちゃった。リサイタルを止める理由のひとつになったであろう、マスコミの手ひどいバッシングには読んでいて腹が立ちましたヽ(`д´)ノ。。なんで評論家というのは、いつの時代も上から目線でエラそうにモノを言えるのか…。
おっと話が逸れました、これはひとりの
音楽家を追った伝記としては、最良のもののひとつじゃないかと思います。読んでいて面白すぎて、一気に読んじゃいました(^^)。クラシックファンのみならず、
音楽ファンなら必読!! あと、少し思ったのは…クラシックって、最初に聴きはじめる頃って、どの曲がどういう位置づけにあるかとか、ぜんぜん分からないじゃないですか。誰かの協奏曲の第1番と第2番だと何が違うかとか、どういう位置づけにあるものなのかとか。そういう、クラシック界では常識(場合によっては、評論家は得意げに名曲扱いしてるけど、プレイヤー側からは「解ってねえな」と思っている曲もあるわけです^^)みたいな豆知識がかなり理解できるようになる本でもあると思いました。グールドさん、性格が思いっきりアーティストというか、大変繊細でわずかな妥協も許さないみたいな所があるので、共演者にもマスコミにもレコード会社の人にも遠慮せずにずけずけ言うから(^^)。。というわけで、グールドファンやクラシックファンのみならず、クラシック・ピアノの世界に入ってみたいけど何から聴いたら全然分からない…みたいな人にもおススメです!!
- 関連記事
-
スポンサーサイト