
僕はアストル・ピアソラでぶっ飛んでタンゴに入ったクチですが、ピアソラは厳密にいうとタンゴじゃないんだそうで。僕の印象だと、タンゴというのはあくまでダンスが中心のものだと思います。あくまでダンスが中心、次に音楽だけのタンゴがある。で、音楽のタンゴの中にちょっと異種のジャンルがありまして、それが歌タンゴ。イメージではジャズにおけるジャズ・ヴォーカルみたいなもんで、伴奏をするのはもちろんその道のミュージシャンなんですが、器楽とはちょっと別のものとしてある感じ。このCDの主人公の
カルロス・ガルデルは歌タンゴの伝説の人。1935年没という事ですから、まさに伝説の…という感じですね。
まずビックリするのは、1935年に死んでいるという事は、当たり前ですが録音はそれ以前のはずなのに、ビックリするぐらいに音が良い!!ビートルズのファーストアルバムとかより全然音がいいんじゃないんじゃないでしょうか。次に、それだけ古いと、音楽も古くさいんじゃないかと思ったんですが…いや~、これ、
このままやっても現代でも思いっきり通用しちゃうんじゃないかしら。歌はすごく上手いし、バンドもうまい!!曲もアレンジも見事!!なんというんでしょうか、既に完成されている感じがあるというのと、あくまで狙いがシンプルなんですよね。曲の構造も着想も、「これ」というのが決まったら、徹底してそれをやるからすごく音楽が強くなるというか。あと、現代のタンゴと比べると、ギター伴奏のタンゴが結構多い感じで、またこのギターがすごくタンゴ的というか、リズムがすごく強い!!
もうひとつ思ったのは…タンゴというのは、やっぱりあの2拍子/4拍子系の「ズン、ジャッ、ジャッ、ジャッ」というリズムとその極端な強調に特徴があるのであて、それ以外の部分を聴くと、当時の他の地域のポピュラー音楽とすごく似ているように感じます。フランスのシャンソンのエディット・ピアフとか、ジャズの
ホーギー・カーマイケルとか、なんか音楽の作りが全部似ている気がします。やっぱりこれは色んな文化が衝突して、クラシックの機能和声の技法を用いてポピュラー音楽を創る初期段階だったという事で、ジャンル以上に「2次大戦前の西洋ポピュラー音楽」という感じなのかも。
いや~、それにしても、こんなに古いタンゴが、ここまで素晴らしいとは思いませんでした。最近、日本で歌タンゴを聴いたんですが、もうその基礎的な部分は100年前に出来ていて、しかも現在でもほとんど変わっていないと言えるぐらいの完成度。ちなみに、カルロス・ガルデルはアルゼンチンでは国民的英雄レベルの人なんだそうで。モダン・タンゴが好きな人は、ぜひ遡ってこのあたりも聴いてみてはいかがでしょうか。僕的には、モダン・ジャズが大好きで、さかのぼって「どうせ古くさんだろうな」と思って聴いたビ・バップが凄すぎてぶっ飛んだ時とすごく似た経験でした。
大おススメ!!!
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