
タンゴにアコースティック・ギターと来たので、その流れでもうひとつ。國松竜二さんというクラシック系のギタリストによるピアソラ作品集です。知名度と一般的な評価が全然違うミュージシャンというのはいるもんで、國松さんもそのひとりなんじゃないかと。
僕が思う日本の素晴らしいギタリストのベストテンに入る人です。
僕が思うすごいギタリストってどういう事かというと、ひとつはアーティスト性があること、もうひとつはそのアーティスト性を生かすだけの技術がある事。アーティスト性というのは、どれぐらいクリエイティブで、そのクリエイティブさがどれぐらい説得力のある音楽につながっているか、という事なんじゃないかと。國松さんは、クラシックギターからスタートしてスペイン留学してクラシック&フラメンコを学習、そしてライブでは即興演奏を最大の表現手段にしているという人(今はどうか知りません。2007年のころ、そういってました)。素晴らしいアーティスト/ギタリストの条件が整いまくりです(^^)。ただし、國松さんのいう即興というのは、僕が聴いたコンサートの時の印象では、インプロヴィゼーションというよりソロアドリブに近い感じかな?
そしてこのCDですが…いや~、期待しまくってたんですが、これがちょっと残念。ギターでのピアソラ作品集としては悪くないCDと思うんですが、やっぱりクラシック系の人が演奏するタンゴの典型みたいになっちゃいました。丁寧でおとなしくなっちゃって、タンゴ特有のグルーヴ感がごそっと失われて、毒の抜かれたBGMになっちゃったよ(T_T)。たとえば6曲目の「ブエノスアイレスの夏」なんて、いかにも4分音符の強烈なビートが命の曲なのに、これが弱すぎ。ほかでいうと、このCDには「ナイトクラブ1960」も入ってるんですが、それは前に取り上げた
近藤秀秋さんのCDでも取り上げられてるんです。どちらが技術的にうまいかというとたぶん國松さん、しかしどちらが音楽的に強烈かというと圧倒的に近藤さんと感じるんですよね。つまり、技術じゃないどこかに音楽の何かがある。音楽に技術は必要だけど、技術が音楽ではないんだなあと痛切に感じさせられたい演奏でした。
しかし、フォローしておくと、
私、國松さんのリサイタルを生で見た事があります。そこで演奏したピアソラの演奏はすごかった!!本当にすごかったんですよ、感動のあまり、普段は拍手しない僕が終演後ずっと拍手してました!!つまり、もしかすると國松さんじゃなくてレコーディングが悪かったのかも。CD記載のプロダクションデーターを見ると…神奈川のホールを借りて録音したみたい。CDの音は「ただ録音しました」みたいなそっけない音だし、演奏は「間違えないように」という事に気にかけているような慎重さが目立つし、これはCD用の録音に慣れてないのかも。
本当はすごいアーティスト/ギタリストなのに、その実力を発揮し切れなかったCD、なのかも知れません。レーベルがクラシックのフォンテックというのも影響してる?タンゴの強烈なグルーブとかを理解できないで、クラシカルな音に仕上げちゃった感じもあります。僕はこのCDがトラウマになってしまって、國松さんのほかのCDには今も手を出せず仕舞いですが、これほどのギタリストなので良いものもあるんでしょうね。こういう個性的なギタリストの作品は、意外とジャズやロックのレーベルの方がカッコよく作るのかも(^^)。
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