メールス・ジャズ・フェスティバルというのは、フリー系のジャズばかりをやっているドイツの音楽祭で有名(今は変わっちゃったらしい)。このレコードは、メールス・ジャズ・フェスティバルに高柳昌行ユニットが出演した時のライブ盤で、メンバーは高柳さん(g)、飯島晃(g)、森剣治(sax, flute, cla, bass-cla)、井野信義(cello)、山崎泰弘(perc)。4曲収録なんですが、ぜんぶやってることが違います。たいがいの音楽って、同じジャンルで違う曲をやるもんじゃないですか。しかし、そうじゃないところが、かなり色んなことを考えてたんだろうな~、という印象です。で、やってる事がめっちゃくちゃカッコいい!!
1曲目は、とにかく曲想が見事。パーカッションの音は綺麗だし、その上に重なるチェロの延々と続くバス音、それからギターで重なる鋭い和音。もうこれだけで独特の世界観、鳥肌立ちまくりです。普通のジャズではまず味わえないサウンドじゃないかと。で、ここに重なるクラリネットの演奏がまたすごい。僕的には、この1曲目が強烈でした。2曲目は何か雅楽みたいなはじまり方から、韓国語?の詩の朗読みたいなのが重なって、とつとつとしたフリー。3曲目は恐らくかなりの音量で演奏したであろう、爆音系のパフォーマンス…なんですが、サックスやギターがやってることがかなりカッコ良い。15分近く、音楽がつながってます。出す音も「いい音出すなあ、いい音選ぶなあ」という感じ。4曲目がギターソロで、リー・コニッツのジャズ・ナンバー。というわけで、これだけ違うと、どの曲も始めるまで何も決めないというフリーでは全然なくて、演奏する前に「この曲はこういうコンセプトで」みたいなしめし合わせはあったんじゃないかと思いました。まあ、その方が音楽は圧倒的に良くなるでしょうから、能力あるミュージシャンなら、いくらフリー系だろうがそういう事をする方が自然かも。
さて、
高柳さんの音楽を聴いていていつも思うのは、音の選び方がうまい事です。音符の選択もそうだし、作り出す音色もすごくカッコいい。 実際には、さっきチラッと触れたコンセプトの立て方とか、色んなところに凄く深いものを感じますが、そういう深い所に行く以前の音の選択の時点で既にカッコいいっす(^^)。
しかし残念なことに、最近の高柳さんへの評価は「ノイズ」「爆音の始祖」…そこか?だったら、ノイズ系でいくらでも音のでかい、ノイズな音楽はあると思うんですが…。リスナーなら何を言ってもいいと思うんですが、ミュージシャンや評論家でこの音楽をそういう風にしか聴けない人がいるという状況は、ちょっとさみしいっす。ピカソやジョルジュ・ブラックの絵を見て「デタラメ」というようなもんですからね。というわけで、素晴らしい音楽をやっているのに、間違った伝わりをしちゃっている不運な音楽家の気がします。というか、無理解は、残念な事ではあるけれど、先鋭的な芸術家の宿命なのかも知れませんね。高柳さんの名作のひとつじゃないかと。
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森剣治(sax, flute, cla, bass-cla)氏は名古屋エリアジャズの巨匠。モリケンさんはドラムもベースも鍵盤もなんでもできる人で、わんわんわんがジャズの師匠(勝手に思ってるだけですが)として尊敬している人です。モリケンさんは落語もうまいです。