『Emerson, Lake & Palmer / Pictures At An Exhibition』

ELP_Picture.jpg 僕がELPで最初に聴いたのは、たぶんこのアルバム。ムソグルスキーの『展覧会の絵』というクラシックのピアノ作品(管弦楽アレンジの方が有名?)を、ロックバンドのELPがやったもの。ライブ録音です。このアルバム以前にも、キング・クリムゾンやフランク・ザッパがホルストの『惑星』の一部を引用した事はありましたが、ロックバンドがここまでクラシックの作品に大々的に取り組んだ事は、それまでなかったんじゃないかと。とはいえ、原曲は一部抜粋だったり、アレンジも「あ、こんなふうにしても著作権は大丈夫なのか」という所もあったり、ELPのオリジナル曲や即興っぽい演奏も入っていたり…と、完全なアレンジ物というわけではありません。ロックですね~(^^)。

 僕はこのアルバムをマジメに聴いた事が、3回あります(マジメじゃなければけっこう聴いてきました^^;)。それぞれに感想が違うんですよね。最初に聴いたのは、中学生の時。プログレ大好きだった僕にとって、このアルバムはちょっとだけ退屈でした。和声/スケールもリズムも、とにかくインサイド。これって、クラシックのオーケストラの音楽を「退屈だ」と感じてしまう感覚に近いんでしょうね。というわけで、『太陽と戦慄』時期のクリムゾンや『ウマグマ』期のフロイドが素晴らしいと感じ、『危機』時期のイエスとかをつまらないと感じるようなセンスだった僕にとっては、これは演奏の良し悪し以前に、相性が合わなかった(;_;)。

 2回目に聴いたのは、音大生のころ。音大に入った頃、お願いするピアノの調律師の方を変えました。その調律師さんはピアノもうまくクラシックも本当に詳しかったので、僕は大尊敬。そしてその人がELPが好きだと聞いてびっくり。その調律師さんのハナシでは、ELPが一世を風靡したのって、72年ぐらい(?)からほんの数年。でもその時のロックは、グランドファンクの大雨の中での爆音来日公演に、このELPの来日公演…「また何か起こる?!」みたいなワクワク感があったそうです。ひとつ言えるのは、単純にこのサウンドに感動したかどうかという世代間ギャップはあるかも。確実にサウンドは大きな魅力で、かっこいいです。でも、僕の時代まで来ちゃうと、安いデジタルシンセのプリセットにすらこういう音は山ほど入っていて、こういう音にありがたみを感じにくくなっちゃっていたのかも。そうそう、クラシックもその頃は凄くワクワクしたそうで、「大学生は今みたいに馬鹿じゃなくって、クラシックもジャズも聴くし、本も読んだもんだったよ」との事。ああ、それ、ちょっとうらやましいなあ。。

 そして今回。このアルバムを楽しむにはコツがあるのかも。まず『展覧会の絵』の原曲やクラシック界での演奏がどうこうという考えはナンセンス。ラヴェル版アレンジのゲルギエフ&ウィーン・フィルあたりを知っている人が、この演奏を「すごいテクニックだ」とか「理解するのに10年かかる傑作だ」なんて讃える人たちに「そうじゃないだろ」と言いたくなっても当たり前なんですよね。たぶんこのレコードに感動した人は、先にELP体験をした人が圧倒的に多いと思うんですが、その人たちがどこに感動したか、という所が重要なんじゃないかと。音楽の教科書からはみ出してないとか、表現が「押す」しかないとか、そういう音楽的な聴き方をしちゃダメ。ひっくり返して言えば、クラシックピアノでこういう爽快感を感じた事はあんまりないので、やってる部分が違うんだと思います。指が動くという意味で「フュージョン」(チック・コリアのエレクトリック・バンドとか)とほとんど同じ意味で使われる「プログレ」として聴けば、指が動くのを楽しんでいるようなこの音楽は楽しい!やってる方も、すっごい楽しかったんじゃないかな~。この疾走感や爽快感を楽しめれば、すっごく楽しいです。でもそうなると、『展覧会の絵』である必要はどこにもなくなっちゃうんですが(・ω・)。

 僕はロックとクラシックのどちらかだけ無人島に持って行って良い…と訊かれたら、悩んだ挙句にクラシックを選んじゃうと思います。でも、クラシックって、窮屈に感じる時があるんですよね。ピアノでいえば、今鍵盤を押さえている指のどれをいちばん強くして、どれを弱くして…なんていうのをひたすら追求していくので、「ああ、もっと自由にガンガン演奏したい!」な~んて思っちゃう時もあったりして(^^)。クラシック・ピアノをリスペクトしつつ拒否もしているように見えるエマーソンさんにも、こういう感覚があったのかも。このアルバム、さすがに賛否両論の出る音楽と思います。全員がリスペクトしたら絶対におかしいし、かといって全否定もありえない。やってる事が子供っぽいので、大人になってしまった今の僕が推薦したいとは思わないアルバムですが、当時のロックのキラキラ感につながっていただろう、この賛の部分を楽しめたら…ロックに新しいやり方を持ちこんだ、ロック好きなら聴かずに通過は許されない類のアルバムと思います。な~んて、これ以前にもエマーソンは同じような事をやってるんですが(^^)、それは次回にでも。


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なんか凄いです!

やっぱり音楽の才能があるってこと、音楽の勉強をされた方は凄いです!
私なんかは、感性でしか、わかりません;^_^A
いいか、悪いか、好きか、嫌いかですね

感性ですよね(^^)

ボネ太郎さま、書き込みありがとうございます!

音楽って、聴く時は絶対に感性だと思います。ゴチャゴチャした理屈は、感性で判断したものの説明に過ぎないんじゃないかと。演奏家とか調律師みたいな音を作る側だったら、「なぜ悪いか」を潰さないといけないので、理屈で考える必要があると思うんですが、聴く側はそういう所から自由でいいと思うんですよね~(^^)。

自分でも、理屈っぽいブログでたまにいやになります(。_。*))まあでも、こういうブログがひとつぐらいあってもいいのかな?
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Author:Bach Bach
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音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

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プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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