
続きまして、ドビュッシーの管弦楽曲です。僕は、ドビュッシーに関してはこのCDの指揮者であるブーレーズに教育して貰ったような所があります(^^)。このCDには、「夜想曲」「クラリネットと管弦楽のためのラプソディ1番」「遊戯」「海」が入っていますが、特に人に薦めたいのが「夜想曲」の3番と、「海」です!
まず、
「夜想曲」。3楽章からなるこの作品で、ザ・フランス音楽と僕が感じるのは、3楽章の「シレーヌ」。この楽章だけ女声合唱がつくんですが、この和声感覚はヤバいです、鳥肌ものの浮遊感覚!ドイツ音楽にはあり得ないこの4度積みの声の重なりの悦楽は、聴いていてゾワゾワきてしまいます。合唱のヤバさって、弦よりも互いの音が綺麗に溶け込む所だと感じます。そしてそれがこのインターバルで重なると…暗さとか悲しみとかとは無縁、かといって能天気かというとそうじゃなくって…もうこの感覚は、音を体験しないと伝わらないかも。この和声感覚は、ラヴェルの超傑作「ダフニスとクロエ」の冒頭に思いっきり繋がっていきますが、これが元祖だったんじゃないかと思うんですよね。いや~、これを聴くためだけでも、このCDは手に入れる価値があります!ぜったい、いいオーディオで聴くべき!
続いて、ドビュッシーの管弦楽曲と言って真っ先に出てくるのは「海」!フランスのこの4度和声音楽が来るまでは、クラシックはドイツの機能和声音楽の「緊張」→「解決」の独壇場。フォーレやサティをきっかけに、「印象主義」なんていうその瞬間のサウンドの色彩感覚で表現しちゃう音楽が出始めてきて、当時のサロンなんかで印象主義の絵画あたりと結びついて、そして管弦楽として一気に開花したのがこのドビュッシーの「海」というわけです。スタートがあってゴールにたどり着くというドラマではなく、どこに向うでもなくただ漂っているようなこの浮遊感、フワーッとはじまってフワーッと色々な色彩が立ち現われていくこの悦楽…この音楽を聴いている間だけ、すごい音に囲まれて、本当に極楽に入るようです。もう、ずっとこの悦楽に浸っていたい…。
音楽が好きだというなら、ドビュッシーの「海」を聴いた事がないなんて許されないというぐらいの超重要曲、聴いた事がない人は、いますぐいいオーディオ装置で名演を聴きましょう!
そして、指揮者のブレーズとフランス音楽について。今、僕たちは、このCDにも収められている「遊戯」とかのフランス音楽の名曲を当たり前のように楽しめてますが、ほんの少し前の時代は、そんな事なかったんですよね。音楽パトロンから離れて以降の時代のクラシックは、人気興業を目指すことにならざるを得ない面があるので、人気曲はどんどん演奏されるし、不人気曲は誰も取りあげない…な~んてことになっちゃったりします。そうなると、いい曲かどうかではなく、人気曲かどうかで判断されちゃったり。これは他のジャンルでもそういう所があって、ジャズの演奏の場だと「枯葉」はどうしても要求されるし、タンゴだと「ラ・クンパルシータ」は要求されちゃいます。でも、それよりも色んな点で優れてると思える曲が、「大衆への人気」の点から取りあげられずに埋もれていったり…。そういう中で、戦後フランスの大指揮者になったブレーズは(
作曲家としても有名ですが^^;)、フランス音楽に光を当てて、いい音楽を発掘して、そのどこが良いかを言葉で説明していったのです。ドビュッシーやラヴェルの音楽についてのブレーズの説明は、さすが作曲家だけあって説得力がスゴい。フランス音楽の今の興隆は、ブレーズの尽力が大きかったと思います。有名な論文もあるんですが、僕はそれを音大の図書館でコピーしたものしか持っていないので、ここで紹介できなくて残念。そうそう、「海」に関しては、メシアンによるアナリーゼが素晴らしいんですが、これも大学でコピーしたものしか持ってない(^^;)。また、趣味で音楽を聴いて楽しむなら楽理まで入り込む必要なないと思うんですが、そういう方にとって、このCDの2枚目が素晴らしい!ドビュッシー、マーラー、ヴェーベルンという音楽の近現代の大きな流れを、ブーレーズが解説してくれています(=^▽^=)。ただ、輸入盤だとこれがフランス語なので大変。でも日本盤は、全訳を載せてくれてます。これは、近現代が好きな人には絶対に聴いてみてほしい名講義です!!
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最初に聴いたのがいつかは覚えてませんが(おそらく高校生か大学生)
既に、プログレとジャズにどっぷり浸かっていた自分に、
それまでのオーケストラ曲の退屈さを吹き飛ばしてくれた作品でした。
『ブーレーズ指揮・クリーヴランド管弦楽団 』の本CDは聞いたことないのですが、素敵なジャケットですね。(そこか!)
ラヴェル、ドビュッシー、ストラヴィンスキーの3大フェバリットは、
デュトワ/モントリオール響が大好きなもので、ほぼすべてこのコンビで揃えてます。
聞き比べをするほど、クラシックには精通してないのですが。
Bach Bachさんの記事を読んで、久しぶりに聞こうかなと、CDではなくMDラックを開けたら、1985年のカラヤン/ベルリンフィル が見つかったので、聞いています。
どこかのライブ録音で、やはりこのコンビ、フランス音楽をやるには少し生硬な響きでしたが、これはこれで面白かったです。