バンド・オブ・ジプシーズが驚異の表現力に達したジミヘンのパフォーマンスを聴くことが出来て、エクスペリエンスのライブ録音がバンドの物凄いテンションのパフォーマンスを聴くことが出来るのに対し、このデビュー作はジミヘンの作曲家としての才能を聴くことが出来るアルバムだと思います。"Third Stone from the Sun"とか"Are You Experienced"とか"Fire"とか"Manic depression"とか、よくもまあこんな曲が書けるなと。いずれも、私が全く聞いた事のないような曲ばかりでした。で、例によって学校で音楽のお師匠様にそんな話をしていると「ギターで作曲するからそうなるのかもね」なんて答えが。なるほど、確かにピアノでこの曲は書けないという感じですし、"Fire"なんて、ギターで弾くからこそ格好良く感じる曲なんだな、とも思いました。これをピアノで弾いても何ひとつ面白くなさそうです(^^;)。
あと、スタジオ盤ではもうひとつオススメが。『Electric Layland』という生前のジミヘン発表の最後のアルバム(死んだ後に100枚ぐらいアルバムが出ちゃうんですが^^;)。音楽的には、ブルースっぽい要素とか、妙にファンキーな要素とか、ジャムセッションっぽい要素とか、サイケっぽい要素とか、まあいろいろ入っていて、悪く言うとまとまりのないアルバムなんですが、しかしその歌詞に感動させられました。例えば、このアルバムに入っている最後の曲"Moon, Turn The Tides...Gently Gently Away"。「俺とあの人は砂漠で愛し合い、その最後の時に海底に沈む俺たちのマシンに乗って...」みたいな感じ。死生観から、ジミヘンがどういう生き方を夢見ていたのか、こんなものが滲み出しているような感じで、幻想文学的という表層的なところではないところに奥の深さを感じて、じわっと心にしみます。こんな詩も、ロック以外では許されない領域に成立しているもののような気がします。人間文化の中で、ロックの占めていた特異な役割というものを感じずにはいられませんでした。ギターの演奏がクローズアップされやすいジミヘンですが、作曲でも作詞でも、実にすばらしいタレントを発揮したアーティストであったのだと思います。