『Archie Shepp / Live At Donaueschingen Music Festival』

ArchieShepp_OneForTheTrane.jpg 日本では『ワン・フォー・ザ・トレーン』というタイトルで発表された、フリージャズのアルバムです。なぜそういうタイトルかというと、"One for the Trane"という曲しか入ってないからかと。ポップスやロックや普通のジャズあたりが音楽の全てだと思っていた頃、アルバム1枚で1曲というのは、ちょっとビビりました。グランドファンクの10分のパフォーマンスで「よく10分も演奏していられるな」なんて思ってたぐらいでしたから。感性が商音楽に飼いならされていたんでしょうね。

 音大に入ってから、私はどうにも同級生の多くと馴染めませんでした。音大に来る人というのは、3歳とか4歳とかから楽器をはじめて、親もクラシックを教えて…みたいな人が多いです。で、こういう人たちって、クラシックしか知らなかったりする。クラシックが最上だって信じて疑わない人も少なくない。いや、クラシックが良い音楽であることは認めるし、またそれ専門の学校なんで、それは当たり前と言えば当たり前なんですが…それはクラシック家の態度であって、音楽家の態度ではないと思ってました。世間が狭いんだと思ってました。

 特にどこが特に同級生とずれていたかというと、音符に書かれない部分に関する音楽の受け入れ方にあったんじゃないかと。ほら、クラシックって、楽譜に書かれたものの演奏というのが大前提じゃないですか。だから、作曲を勉強する人も、まずは書くことが前提になるし、演奏する人も書かれたものを読むことが前提になる。こうなってくると、紙の上に書かれたその様式に音楽が依存する事になるんですよ。だけど、音楽を教育されて育った人間でない私にとって、それまでに味わってきた強烈な音楽体験って、そういう所にあったものじゃなかった。下世話なところでいえば、少し前の記事に書いたジミヘンのウインターランドでの"Foxy Lady"とか、クリームのライブ・パフォーマンスなんて、その良い例でした。で、クラシックがいつの間にか切り捨ててきた、音楽のそういう部分に、すごくのめり込んだんです。で、クリームとかジミヘンの先に見えたものが、インプロヴィゼーションとか、その辺りでした。インプロヴィゼーションという方法そのものがどうというよりも、徹底的に演奏というものを優先するところに、何か凄みを感じたんですよね。で、インプロヴィゼーションのそういう部分を追って行って、最初にたどり着いた先がフリージャズでした。

 アーチ―・シェップという人は、フリージャズの中でも代表的なサックス奏者のひとりだと思うんですが、その中でも色々と逡巡してきた人だと思います。作曲でインプロヴィゼーションをコントロールしようとしてみたり、ブラスアレンジの上で一人だけ長時間にわたるゴリ押しフリーをやってみたり。で、このパフォーマンスは、そういう思考錯誤を繰り返した先で、本当に自分の内側から出てくるものだけを音にしようと覚悟したような演奏で、ある意味で最もストレートな演奏だと思います。昔は「フリーだ!」と燃えて聴いていたものですが、今聞くと、何というか、実に素直で、実に音楽的に聞こえてしまうのだから、不思議なものです。

 フリージャズには、一時期、本当にハマりました。フリージャズって、音楽の大事な部分が、とても分かり易い形で音に顕れている気がします。中でもアーチ―・シェップは、もうあのエッジの効いたサックスの音色だけでも聞き入ってしまうというぐらいに好きなプレイヤーです。テナーなんですが、アルトのような切れ味。ただ、この人は、フリーの時代が過ぎると、スタンダード集を出してみたりして、それがまたつまらなかったりで、いつしか聴かなくなりました。でも、フリージャズの時代のアーチ―・シェップは、アイデアも演奏も素晴らしいものがたくさんあります。今でもたまに引っ張り出して聴くぐらいに、好きなアーティストです。


 



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Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです(ノ^-^)ノ
音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。
プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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