
ライブアルバムを除くと、キングクリムゾン4作目。最初の解散までのキングクリムゾンのアルバムは、あからさまなライブアルバムを除くと全部で7枚ありますが、つまりこれがど真ん中。そして、音楽も、シンフォニックな初期3枚と、インプロヴィゼーション&現代曲な後期3枚のちょうど真ん中ぐらいで、クリムゾンのなかでもちょっと毛色の違うアルバムといえるんじゃないかと思います。
A面はメドレーのように音楽が繋がっていきますが、序盤はベースのアルコにアリス・コルトレーンのようなジャズピアノが絡む感じで始まります。もうこの時点でロックバンドなんてとうてい呼べない気が(^^;)。これまでのシンフォニックな匂いに、ブリティッシュ・ジャズの名プレイヤーの演奏が絡んでいきます。問題はここからで、どんどんインプロヴィゼーションの色彩が強まって、2曲目「SAILOR'S TALE」まで進むと、美しいオーケストレーションの前で妖しさ満載&熱気ムンムンの素晴らしい演奏!!即興を抜けた後の余韻も妖しくも美しい。。以降ではキングクリムゾンの音楽の中心に来る事になる、ジャズのようなコーラス形式ではなく、クラシックのような劇的展開のうえで繰り広げられる熱いインプロヴィゼーションというスタイルが、はじめて日の目に見たのがこのA面だと思います。
そして、B面。もうこれはクラシックの室内楽といってもいいんじゃないでしょうか。狂気をはらんだようなA面とは実に対照的で、徹底的に美しいです。このアルバム構成がまとまりのなさと感じる人もいるかもしれないけど、僕はこれは絶妙だとおもってしまいます。壮絶なインプロヴィゼーションや古楽調の曲やジャズ、ロック的なハードな曲などを通って、美しい終曲「アイランズ」に辿りついた時の、なんともいえない浄化されるような感覚がすばらしい。なんか、マーラーの最終楽章に感じるような美しさなんですよね。
プレスリーの頃から現在に至るまで、ロックやポップスは音楽番組上の都合からか3~5分の長調か短調の歌謡形式という死ぬほどワンパターンの曲が作られ続けています。曲どころか、演奏なんてそれこそ「こんなのなら人間が演奏する必要もないんじゃないの?」というような平らな演奏もけっこうあります。子供のころの僕は、音楽ってそういうものだと思ってたんですが、そうでない「これぞ音楽」というものを最初に教えてくれたのは、キングクリムゾンだったかも。このアルバムはキングクリムゾンの中では目立たない作品かも知れませんが、
実はとんでもなく素晴らしい作品、絶対に聴くべきです。というか、クラシック系の人だろうがジャズ系の人だろうが、歌謡曲やロックしか聴かない人だろうが、最初の解散までのキングクリムゾンは、録音劣悪のライブ盤と「ポセイドン」以外は全部聴くべき。音楽好きの人間がこれを体験しないでどうする、と思ってしまうほどの素晴らしさです。
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