
宮川泰さん生涯の最高傑作は宇宙戦艦ヤマトでしょうが、弦アレンジの編曲家として売れっ子になったのは、このポップスの管弦アレンジからだったと聞いた事があります。ピアノ弾き語りのシンガーソングライター小坂明子さんの大大大ヒット曲!ピアノ弾き語りにフォーリズムと管弦のアレンジがつけてあって、このアレンジが200万枚の大ヒットにつながる要因のひとつだったんでしょうね。
でも、宮川さんのアレンジは、今聴くと「ダンダンダンダン…」みたいな盛り上げ方とか、さすがにダサすぎる(^^;)。あくまで70年代初頭の日本の音楽シーンや、テレビ番組のビッグバンド想定のアレンジという状況も考慮に入れないといけないんでしょうね(^^)。逆に言うと、音大を中退してこういう作曲やアレンジで食っていた人が、よくここから宇宙戦艦ヤマトのあのシンフォニーを作り上げる所まで行ったな、というところに感動。その間には、相当な努力があったんじゃないかと。素晴らしい才能があってプロになったというより、音楽が好きでプロになって、それ以降も努力をして成長した人なのでしょう。つべこべ言う事は誰だって出来るけど、実際に努力して成し遂げる事が出来る人はなかなかいないし、それを成し遂げたんだから、本当に素晴らしい!
そして主役の小坂さんと、「あなた」という曲。まだすごく小さな子供のころにテレビで耳にした時、よく分からないながらも、なんていい曲なんだと思いました。母がこの曲が好きで、この曲がテレビやラジオから流れるたびにウルウルしてました。また、テレビタレントのケント・デリカットさんが日本に来て間もない時に、ホームシックになるわ文化の違いに苦しむわで大変な思いをしていたときに、テレビから流れてきたこの曲を聴いて涙が止まらなくなり、日本にはなんて美しい歌詞の歌があるんだと感激、日本で生きる決心をしたなんて話もきいたことあり。なんといっても詞が素晴らしく、その詞を支えるメロディーや歌唱が詞の内容と実にマッチしていて、これで心を動かされない人なんて滅多にいないんじゃないかなあ。これ、べらぼうに歌のうまいオペラ歌手が歌おうが、大人気のアイドルが歌おうが、胸に来ないんじゃないかと思います。そんなに歌もうまくない作詞者本人が、自分の言葉で語っているように思えるから、200万人もの人が心を打たれたんじゃないかと。
小坂さんといえば「あなた」ですが、実はアルバムに入っているほかの曲も、素朴でいいです。特に詞がいい!「六月の子守唄」とかもそうですが、こういう詞って、今の産業ポップスからは出てくることができないんじゃないかなあ。今の日本のポップスは美辞麗句ばかりで本音を言葉にする事も出来ず、その技術もすたれちゃって駄目だ…。。こういう歌があったというだけでなく、それをみんなが聴いていた70年代という時代には、まだ日本の流行歌の中にも歌が生きていたんでしょうね。
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