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『アーヴィン・アルディッティ(vln)他 / ノーノ:未来のユートピア的ノスタルジー的遠方』

Nono_LaLontananza_arditti.jpg 前の記事のノーノの「力と光の波のように」はノーノの活動中期の作品ですが、この「未来のユートピア的ノスタルジー的遠方」は晩年の作品。そして、クラシックのレビューなんかを見ていると、「ノーノ晩年の作品はたいへんに静か」みたいに言われてたりします。この「未来のユートピア的ノスタルジー的遠方」は、その部類に入る作品の代表的なひとつだそうで…。しかし、個人的には全然そういう風には思いません。これほどに音を衝突させている音楽を「たいへん静か」って…。。

 「未来のユートピア的ノスタルジー的遠方」について、私は良く知りませんでした。ただ、ノーノが大好きだったもので、ノーノのCDを見つけるたびに、昼飯を抜いて、浮いたお金でCDを買い漁って聴いていただけ。「未来の~」は、その中でも「ああ、これは凄くいいな」と思っていたという程度。僕が行っていた音大の図書館って、ベートーヴェンとかバッハとかの楽譜はいっぱいあったんですが、現代曲の楽譜って、極端に少なかったので、ノーノの作品は楽譜も見た事ありませんでした。この作品にどういう制作意図であるかを知ったのは、恥ずかしながらつい最近の事。「未来のユートピア的ノスタルジー的遠方」の5.1chサラウンドのCDが出ていて、それに飛びついたんです。で、その日本版に日本語解説がついていまして、ここに実に細かくこの作品の全貌が書かれていたのでした。

 「未来の~」は、ヴァイオリンのソロと、録音されたテープの共演という形の作品です。面白いのが、そのテープが8チャンネルで、それぞれのチャンネルごとにオン/オフが出来て、どのチャンネルを出すのかは、オペレーターの判断に任されている点。もともとこの曲はクレーメルのヴァイオリン演奏を前提にしていたそうで、テープにはクレーメルが予め吹き込んだ音が入っているチャンネルとか、スタジオ内の会話とかが入ったチャンネルとかがある。要するに、クレーメルは自分のヴァイオリンと差しで共演する事になるわけです。で、入っている音が、ハイトーンで演奏されるヴァイオリンのオブリとか、例によってノーノっぽい密集した和音とか。
 これって、どういう意味があるのか、何となく分かる気がしませんか?作曲する時って、いきなり楽器同士の複雑な絡みを全部書き上げるわけではなく、メインになるものを最初に作って、それに対する対メロとか、エクステンションとかを追加して、少しずつ肉付けしていくことが殆どだと思うんです。で、この肉付けって、可能性のひとつとしてあるんであって、絶対にこうでないといけない、というものじゃないと思うんです。例えば、すごく演奏するのが大変なリストの曲で、32分音符でスケールをものすごい速さで駆け上がるところとか、あれって、こんな感じがいいと思っているだけであって、あれ以外にありえないというわけじゃないと思うんですよ。あくまで、一例。リスト自身も、自分の曲を演奏するときは結構即興でやってたみたいですしね。曲の骨子を毎回バラバラにしていたのでは音楽になりませんが、しかし細かい部分での最善の音を決定できるのは、本番の瞬間だけである気がします。これは勝手な推測ですが、こういう事を作曲家は考えていたんじゃないだろうか。偶然性とかチャンスオペレーションとかじゃなくって、再現芸術が持っている問題点を解決に行った、必然性の追求なんじゃないかと。他にも色々と思う所はあるのですが、それを全部書いているときりがなさそうなので、今日はこの辺で(なんだそりゃ)。

 わたし、この曲のCDを3種類持っています。ひとつは、例のクレーメルが演奏し、ノーノ本人が立ち会ったCD。ひとつは、さっきの日本語ライナーの入っている5.1chサラウンドCD。そしてもうひとつが、ここでとりあげたアルディッティによるCD。このような可変形式を持つ音楽なので、それぞれものすごく違う音楽になっています。中でも好きなのが、このCD。テープと生楽器が、これぐらい有機的に絡んだ音楽というのは、他にないんじゃないかというぐらいの見事さです。他のCDに比べると、テープパートの選択が結構ガッツリしていて、例のクラスター気味のヴァイオリン多重層のパートがグイグイ来る場面が多いです。ソロのヴァイオリンも、クレーメルが非常に流暢な演奏をしているのに対して、こちらはガツガツくる感じ。で、このコンビネーションが強烈。音楽のデザインも、長調とか短調とかのバリエーション違いの音楽を色々漁って聴いているのが馬鹿らしくなるぐらいに、ゾッとするような刺激的なサウンドがここにあります。

 自分があまりに感動してしまった音楽なもので、余計なお世話とは知りながら、どうしても他の人にも聴いてほしい!って、思っちゃうんです。これも、アマゾンで見たらプレミアついてる。。もし、これが手に入らないようでしたら、クレーメルの方もメチャクチャに素晴らしいですので、そちらもおススメです。5.1chの再生環境があるようでしたら、5.1chのCDも良かったです(僕はDVDデッキで再生しました)。これは、すごくすっきりした感じの演奏です。考えてみれば、もともとバラバラのスピーカー8本から音を出そうとしていた作品なので、サラウンドシステムで聴く音楽といって、この曲ほどふさわしい音楽もないのかもしれませんね。


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Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
スゴイのが出る!King Crimsonの1970-1972年の間のスタジオとライブ音源!21CD+4BD+2DVD!リハーサルテイクとか、メッチャ聴いてみたい!2万円か、また貯金しないと。。 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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