
黎明期の日本のロックの大名盤として名高い一枚です。もともとは内田裕也さんが在籍していた「フラワーズ」というバンドが母体で、裕也さん脱退後にジョー山中さんなどを加えて再出発した日本のロック黎明期のバンドが「Flower travelin' band」、これはその代表作と言われてる1枚っす。1971年発表のこのアルバムはアメリカのアトランティックと契約して北米で発売されたそうで、日本には逆輸入の形。北米でアピールするものとして、アルバムタイトルもジャケットデザインも東洋を押し出してますが、音楽は思いっきり
アメリカのサイケ。歌も少なく、ほとんど雰囲気サイケといったかんじ。コード進行とかもあんまり考えなくてリフの組み合わせが中心というところは、
ブラック・サバスっぽくもあります(^^)。サイケに興味津津だった子供のころ、「おお~怪しくってかっこいい」と思ったものでした。60年代のアメリカのガレージバンドやサイケバンドって、こういう感じのものもけっこうあるから、言われなければアメリカのバンドと言われても分からないかも。そういう意味で、これは
「アメリカのサイケデリック・ロック」と言い切っちゃってよいんじゃないかと。
日本のロックの名盤みたいに言われるアルバムですが、ぼくには日本的な要素をどこにも感じないので、これを「日本の~」と呼ぶのはどこか抵抗があったりして(^^;)。でも、アメリカ丸パクリという傾向じたいが70年代以降にジワジワと浸透した戦後日本の特徴なんでしょうね。戦後生まれの人が大人になり始めたころで、アメリカの文化統治戦略が成果を出し始めたころ。もしこのバンドと同世代だったら、演歌やムード歌謡やグループサウンズやフォークがあふれた日本のシーンで、英米のハードロックやサイケデリックをそのままやるだけでも相当にカッコいい事だったのかも。ロックを演奏出来るというだけでも大喝采、ましてサイケなんてカルチャーショックレベルだったのしれません。仏像っぽいジャケットデザインや「悟り」なんて言葉を使っていかにも日本かアジアを意識させてるのに、そんなの音のどこにもなくて「売る為なら意味なんて関係なしに何でもアリなのかよ」という部分までアメリカっぽいなあと思ったりして(^^;)。でもそれって世代ギャップなんでしょう、こういう先駆者がいなかったら英米の軽音楽の吸収は無かったはずだし、悪い面はあるものの良い面の方が圧倒的に大きかったんでしょうね。そんなわけで、今の時点でこのレコードを楽しむとしたら、黎明期の日本のロック云々じゃなくって、アメリカン・サイケそのものだと思った方が楽しめるかも。そう思えれば、いい米サイケデリック・ロックだと思います(^^)。
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