
アルバン・ベルク・カルテットという弦楽四重奏団は、一番好きなストリングス・カルテットです(ときどき
クロノス・カルテットに浮気しますが^^;)。うまいのはもちろん、戦後の楽団なのに昔の楽団のような情感たっぷりな感じが残ってる所と、戦後の優秀楽団共通のメカニカルな技術の高さが同居してる感じがいい!そしてリサイタルでは絶対に近現代曲も取りあげる攻めの姿勢がスバラシイ!これは、レオシュ・ヤナーチェクというモラヴィア(今のチェコにある都市のひとつ)の作曲家が書いた弦楽四重奏の1番と2番の演奏です。ちなみに、ヤナーチェクさんが書いた弦楽四重奏はこの2曲ですべて。
ヤナーチェクさんは、19世紀末から20世紀初頭にかけての人で、この時代のクラシック中心圏の外にいました。ノルウェーのグリーグとか、フィンランドのシベリウスとか、スペインのグラナドスとか、そしてこのチェコのヤナーチェクとかは、地域色の強い曲を書いてます。そういう人を「国民楽派」と呼ぶことがあって、リムスキー・コルサコフを含めたロシア5人組なんて、もろに「ロシア国民楽派」と呼ばれます。この時代のこういう風潮って音楽に限った話ではなくって、まわりの国を侵略支配するアングロサクソンの帝国主義に反発する心境で起きたみたいです。植民地主義や侵略を推し進める強国の価値観に呑まれると、自分たちは国力だけじゃなくて文化まで周縁地域の傍流になっちゃう。そういうのに反発して「うちらにはお前らが持ってないすばらしいものがあるぜよ!」みたいな感情が、民族主義とか民族復興運動みたいな所につながっていったんだそうで。ヤナーチェクさんは政治色が強いわけじゃないんですが、帝国主義を押し付けてくるアングロサクソンに対するスラブのわずかばかりのアイデンティティの確認、みたいな感じかな?ヤナーチェクさんはチェコの人なので、東欧風の舞踊音楽とかスラブ人の民謡とかをクラシック音楽に取りこんだ曲を書きました。彼の住んでいたチェコの東部モラヴィアの音楽は短調系が多くって、西部ボヘミアは長調系の曲が多いです。その短調系というのも純粋なマイナースケールばかりじゃなくって、ちょっとエキゾチックな旋法とか、跳ねるようなリズムとか(たぶんこれは舞踊音楽から来てるんでしょうね)、特徴があったりします。
というわけで、ようやくこの弦楽4重奏のハナシに(^^)。
民族主義といったってモロにネイティブな音楽をやってるわけじゃなくって、クラシックのロマン派音楽の中に20%ぐらい地域音楽のエッセンスが入ってる、そんな感じです。この弦楽四重奏1番の場合、冒頭に一度聴いたら忘れられないような跳ねるリズムの繰り返しが出てきますが、ここはいかにも民族舞踊的ですが、大きく見たらやっぱりロマン派音楽、とってもドラマチックです(^^)。そして、ヤナーチェクはチェコという田舎の作曲家とは思えないほど作曲技法の使い方が卓越していて、弦カルの中でも和弦、ユニゾン、対旋律、四声のパートライティング…どれをとっても見事。う~ん実に巧みだ。。
そして、このCD。やっぱり演奏がいいです!録音は残響少なめでちょっと色気ない感じですが、しかし音が太い!リズムを強調したい曲想な気がするので、あんまりホールの残響がボワンボワンじゃないのは、実は正しいのかも(^^)。
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