バックハウス、
ダルベール、
リスト、というクラシックのピアノの天才の直系の系譜をさかのぼってきたところで、やっぱり行きつくのはベートーヴェン。これ、ぜんぶベートーヴェン直系の弟子筋というのがすごいですよね。しかもバックハウス以外はピアニストとしてだけでなく作曲家としても素晴らしい作品を残してるし、音楽家になっていいのはこういう人たちなんでしょうね。
さて、ベートーヴェンというと、一般的には
「運命」とか「歓喜の歌」みたいな交響曲を思い浮かべると思いますが、作曲の手本としては、ちょっと前に書いた「悲愴」や「月光」を含むピアノ・ソナタ全32曲がとにかく有名。なんといっても、クラシックの作曲様式の極みであるソナタ形式を整備してしまったんですから、すごい。そして、もうひとつ挙げるとしたら、この「ディアベリ変奏曲」が有名じゃないでしょうか。これは、ソナタではなく変奏という形式を使った曲です。変奏曲というとモーツアルトのキラキラ星あたりが有名ですが、
ベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」の場合、ひとつのテーマをなんと33にも変奏してしまいます。なんでそんなに変奏できるんだ…。集中しないでぼ~っと聴いてると、同じテーマの変奏だというのに気付かないものも多数あり。僕なんか、メチャメチャ集中して聴いていたつもりなのに「あれ?これも変奏なの?」と思ってしまった(^^;)。学生の時、変奏の分析課題は、この曲とブラームスの「ヘンデルのテーマによる変奏曲」でした。それぐらい、変奏曲という様式の代表的な作品です。ベートーヴェンが整備した様式や技法はとにかく多いんですよね。
変奏曲というのは元のテーマを変奏していくわけですが、そのテーマ自体は、誰か違う人が書いたものを使う事が多くて、この曲もテーマ自体はベートーヴェンじゃなくってディアベッリという人が書いてます。そして、彼が書いたテーマの変奏を、色んな作曲家に依頼して作ってもらう、というのがディアベッリさんの最初の狙いだったんですが、その第1変奏の作曲を依頼したベートーヴェンの気合いが入りすぎて33もの変奏を作ってしまった(^^;)。おかげで、いろんな人が変奏したヴァージョンと、ベートーヴェン単独のもののふたつが完成してしまったという次第。ちなみに、みんなで作った方には、カール・ツェルニー(ベートーヴェンの弟子でリストの師匠)やリストの名前もあります。
そして、このCDです。86年のライブ・コンサート録音。いや~素晴らしい!
スヴャトスラフ・リヒテルというピアニストは、「20世紀最大のピアニスト」なんて言われる事もあるほどのものすごい人ですが、これは誇大広告じゃないな…と思えるほどです。クラシックのピアノって、ある線からいきなり天才的な領域とそうじゃない人の壁があると思うんですが、リヒテルとかアルゲリッチとかホロヴィッツとかグールドは、その線を越えているというか、次元が違うと感じます。リヒテル晩年の演奏で、けっこうテンポを落としている変奏もあるのですが、これが若いころは「年とって指動かなくなったからテンポ落としたのかな?」と思ったんですが、いま聴くと変奏で対応させるもののバリエーションを増やすためにやったんだとしか聴こえません。若いころの自分は何を聴いてたんでしょうか。若いって、それだけで弱点ですよね…。ディアベリ変奏曲の録音は他にも持っているのですが、僕は86年のリヒテルのこのコンサート録音の演奏が一番好きです。リヒテルについてはまたあらためて書きたいと思いますが、クラシックを聴かない人のために書いておくと、クラシックで有名な人で紛らわしいので気をつけておきたいのは、ピアニストはスヴャトスラフ・リヒテル、指揮&オルガンはカール・リヒターです。どっちも「Richter」なので注意!
いや~今年はクラシックのCDのレビューをあまりできませんでしたが、クリスマス前に素晴らしいCDを聴けて良かったです(^^)。
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