
一世を風靡したマンガ「うる星やつら」の原作者・高橋留美子さんが書いたラブコメディー漫画です。この漫画家さん、世代によって代表作の認識が変わってくると思うんですが、僕ら1970年前後に生まれた世代にとっては「うる星やつら」か「めぞん一刻」の人になるんじゃないかと。そしてこのマンガだけ、高橋さんが少年漫画雑誌じゃなくって青年~大人向け漫画雑誌に書いたものだと思うので、いちばん大人の鑑賞に堪えるものなんじゃないかと。そういう意味で、作者の実際の感覚にいちばん近い漫画なんじゃないかなあ。
話は、「一刻館」というアパートの人間模様を描いていて、貧乏浪人生が住んでいるアパートに、20代前半の若くて美人な未亡人が新しい管理人として入ってくるところからスタート。このふたりの関係をめぐって、お互いの恋のライバルや、一方が大学入試や就職という成長過程が絡んで話が展開します。そして片思いだったはずの恋が、互いが大人のパートナーとして認め合っていい年齢に近づき、コメディ7/シリアス3ぐらいだったドラマのバランスが、終盤に向けて逆転します。このバランス感覚が絶妙で、久しぶりに読んだら読むのをやめられなくなって一気読みしてしまいました(^^)。
ドラマの骨格にあるのは、変化なんじゃないかと。主人公の悩みは、付き合いたくても自分はまだ学生or浪人で、相手と釣り合わない。未亡人は死別した夫への思いや操があって、それが足を引っ張ります。自分も好意を持っているのに、操を立てて大学生の思いをはぐらかす。この状況や心境が少しずつ変化していき、ドラマが生まれます。

僕的には、美人でやきもち焼き、そして亡夫を忘れないでいたいと思う未亡人が、その墓前で変わっていく自分の心境を打ち明けるシーン、付き合って6年たってはじめて部屋で抱き合った後に主人公にボソッと言うセリフ、主人公とずっと付き合っていたけなげな女の子こずえちゃんが主人公にキスをするシーンと別れ、亡夫の遺品を実家に戻すシーン、これらがベスト。特に、けなげなこずえちゃんが主人公をだましてキスするシーンはジ~ンときてしまった。。きっと恋愛でいちばん心揺さぶられる時って、本当に相手のことが好きなのに宙ぶらりんの時、両思いで付き合っているという実感をはじめて得た時の感動、そして好きな人と別れなければいけない時、この3つだと思うんですよね。これが「めぞん一刻」には全部入ってて、激しく揺すぶられてしまいました(T_T)。
このマンガ、若い頃に夢中になったんですが、その時の印象は「メッチャ面白い、でも目をそむけたい所も少なくない」って感じでした。理由は、骨格にあるものがリアルすぎたから。別れの傷みって本当につらい、だからなにもマンガでまでそんな体験したくない…って思っちゃったのが学生時代のボクが感じたマイナス面だった気がします。前半はコメディ要素が強いのでそういう部分をあまり感じずに済みますが、後半になるともう笑えない。自分がリアルタイムで似た経験をしている時に読んではいけない漫画です(^^;)。でも、そういう痛みからちょっと遠くなったときに読むと、客観的に読むことが出来て、心は動かされるけど痛みを感じるほどじゃなくなってたので楽しめたのかも。
というわけで、僕的な恋愛マンガベスト3は、
「みゆき」「めぞん一刻」
「翔んだカップル」なんですが、その中でいちばん大人の鑑賞に堪える恋愛マンガが「めぞん一刻」、名作じゃないでしょうか!
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しかし、こずえちゃんのこのシーンは・・・
改めて、涙腺刺激されっぱなしっすよ。
しかし、実写版映画じゃなくてホッとしました。