
クロノス・カルテットは、現代曲を専門に演奏する弦楽四重奏団。僕が高校生の頃、小遣いが貯まると近所のレコード屋に足繁く通ってハードな音楽のCDを買いあさっていたのですが、そのよく行く店の店長さんから「クロノス・クァルテットって、知ってる?」と教えてもらいました。どんな音楽なのか訊くと「う~ん…すごいアヴァンギャルドなんだよ」という事。で、店長さん、新品の封を切って(^^)、僕に聴かせてくれたのがこの『ブラック・エンジェルズ』。…啞然。凄すぎて、声も出ない。。もう、ぶっ飛びました。で、即買ったのですが、あれ、買わなかったら、封を開けたまま新品として売り続けてたんだろうか?
白眉は、なんといっても1曲目のジョージ・クラム曲「ブラック・エンジェルズ」です!冒頭のヴァイオリンの気狂いじみたトレモロ、急転直下のメゾピアノの後に奏者自らが囁く声のピチカート…素晴らしいとしか言いようのない体験でした。クラムという作曲家を知ったのは、この時が初めて。あまりの衝撃に、クラムの音楽は追いかけまくる事になりました。。
また、アルバム全体のバランスもいい。他にも、チャールズ・アイヴスというアメリカの前衛の走りみたいな作曲家の曲とか、ショスタコーヴィチの曲とか、なかなかセンスのいい選曲をしています。大アバンギャルドの直後に、旧約聖書の外伝のラテン語テキストから作られたタリスの40声部のモテットのアレンジ版を持ってくるというのもカッコいい。中にはひどい外れもあって、デジタルシンセのプリセット音と、リズムマシンのこれまたプリセット音をそのまま使った曲なんかも入っています((>_<)。クラシックの人は、こういう事を恥ずかしいと思わない所がダメですね。まあこれは愛嬌という事で。
もしかすると、本物のアヴァンギャルドに触れたのは、この時が初めてだったかもしれません。アヴァンギャルドというと、ただ単にノイズだったり、ろくに音楽が出来ない人のハッタリの方便だったりと、そういうマイナスイメージも少なからず持っているんですが、しかし理性も身体性も兼ね備えた本物のアヴァンギャルドというのは、ものすごい。クロノス・カルテットも、ジミヘンの曲をやって見たり(これが格好良ければいいんですけど、すげえつまんない)、けっこう商売っ気あることをやっちゃったり、なんというかクラシック系の人特有の空気の読めなさ加減を披露しちゃう楽団でもあるんですが、ことアヴァンギャルドものの演奏に関しては本物と思います。特にこのCDは、初期の頃のクロノスの中では、商売っ気を抜きに音楽に取り組んだ、入魂の1作と思います!
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