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書籍『ナディア・ブーランジェとの対話』 ブルノー・モンサンジャン

ナディアブーランジェとの対話 伝説の音楽教師ブーランジェ、晩年のインタビュー集です。なんといっても20世紀の名だたる音楽家の才能を片っぱしから開花させた伝説の人ですから、音楽をやっていて伸び悩んでいる人は、この本からヒントを掴めるかもしれない!いちど読んでみる価値がある本です。
 クラシック音楽にある程度踏み込んだ人で、ナディア・ブーランジェを知らない人はいないと思っていたのですが、それって、僕が末席の末席ながらも音楽を学んだ側の人間だからなのかもしれません。というのも、CDを2万枚以上所有しているとても熱心なクラシックファンの知り合いの方が、ブーランジェを知らなかったから。たしかにブーランジェは作曲家としても演奏家としても人前に立っていないので、聴く専門の人には名前を耳にする機会がないのかもしれません。ブーランジェは、フランスの有名な音楽教師で、1887年生まれ、1979年に他界しています。コープランドやバーンスタインやカーターといった大有名なアメリカ人作曲家が彼女に師事しました。多くの大ピアニストも彼女に師事しました。クラシック以外でも、タンゴのアストル・ピアソラやブラジルの天才エグベルト・ジスモンチなどが彼女のもとで学んでいます。そういう意味で言うと、北米南米問わず、芸術音楽の分野でヨーロッパに大きく遅れていたアメリカ大陸全体の音楽水準を引き上げた人といえます。この本に手を伸ばすのは、作曲にしろ演奏にしろ、音楽を学んでいる人だと思いますが、25年ほど前の私もそうでした。伸び悩んで、わらにもすがる思いで「伝説の音楽教師は、どうやってあんなにたくさんの超一流音楽家を育てたんだろうか、レッスンに上達のヒントがあるんじゃなかろうか」と思ったのです。そして実際に、ヒントがたくさんありました。もう、自分がやってる事なんて音楽の勉強にすらなってないんだなあ、みたいな。打ちのめされましたね。

 この本は、大きく分けて彼女の音楽観や音楽教育観を述べた前半と、彼女と深く関わりのあった音楽家との思い出を書いた後半に分かれています。クラシック音楽ファンなら、後半もすごく面白いと思います。なんせ、ストラヴィンスキー、リパッティ、マルケヴィチ、プゾーニといった偉大な音楽家の裏話や実像が大量に書かれているので、読んでいるだけで面白いです。ストラヴィンスキーの自筆譜に残っている書き直し跡の話とか、なぜマルケヴィチが作曲を公表しなくなってしまったのかとか、もうここまで来ると音楽史の重要な証言で、読んでいて貴重でもあるし、学ぶところも多かったです。
 でも、恐らくこの本を手にする人の大半が興味を持つのは、前半のナディア・ブーランジェの音楽観や音楽教育観ではないかと思います。ここは、直接のレッスン内容が書いてるわけではないのですが、光が差した思いでした。今この本の感想を記憶だけで書いてるのですが、思い出せる事を書いてみます。
 まず、一番覚えているのが、ブーランジェがまだ音楽文化の遅れていたアメリカの音楽家を教育する時に感じた事が、アメリカ人は人一倍勉強家で、才能にも恵まれているのに、耳の発達が十分でないために専門的習得が遅れる、というものでした。外声しか聞こえずに内声を別々に聞く事が出来ない、音は鳴っているのに何も聴いてない、つまりソルフェージュが出来ていない、ということですね。実際、ブーランジェのソルフェージュのレッスンで、驚くほど多くの一流音楽家が育ったわけですし、これは「彼らは俺たちとは別次元だから」とか「クラシックの世界だから」とか、見過ごせないところだと思います。このブーランジェの思想は今の音楽教育に生きています。ソルフェージュが苦手だった僕は、ピアノの練習やら作曲やらの前に耳だ、と思い知らされました。
 次に、集中力。何かあった時に、それに気づける人は進歩の可能性があるけれど、気づかない人は全てをやり過ごしてしまうので進歩しない。集中力や注意力のない人は社会でいい人になるけれど、音楽には向いていないということでした。ブーランジェをはじめ、優れた音楽家は、かなり難しいクラシックの曲でもいちど聴くと覚えてしまうそうですが(しかも忘れないらしい)、ブーランジェに言わせるとそれは特殊な能力というよりも、集中力なのだそうです。ブーランジェの生徒だったイディル・ビレットという7歳の女の子が、楽譜も読めないのにピアノを弾いて聴かせると、和音を取り違える事もなく1音漏らさず聴き分けたというのも、そこに繋がるのだと感じました。僕は、自分の課題以外ではそんなに音楽に集中していませんでした。また、そんなに集中すると疲れるからといって、どこかでブレーキをかけていました。でも、そんな姿勢で音楽をやるなど甘すぎるということを、この本に教えられました。僕がトップクラスの生徒じゃなかったというのもあったんだと思いますが、音大での僕の先生は僕に優しい人が多かったんです…。人生で出会える素晴らしい音楽の数は限られていて、それを聞き逃すなどもったいなさ過ぎる、いちど聴いて全部覚えてしまうぐらいの集中力で常に聴いてないと駄目だったのです。しかもブーランジェは、朝の9時から夜の10時とか、それをずっとレッスンに費やしていたそうなので、集中力の鍛え方が半端でないと思いました。集中力が強いと、人からは神経症というか、ヒステリーに見えるそうです。でも、そう片付けるのは簡単で、そういう人だけが叡智を与えられるのだ、とブーランジェは言っていました。
 欲求とか情熱。凡人はやりもしないことを口にしたり、時間がないと弁解したりするけれど、それはバッハだってシューベルトだってそうだったはず。シューベルトが残した楽譜を調査すると、書くのに25年かかるそうです。でも、シューベルトは実際には15年でそれを書いています。天才とかなんとか以前に、実際に音楽に費やしている時間が違うんですよね。すぐ才能とかいう奴は、それ以前にやる事やってないんだよ、と言われた思いがしました。

 そして、誰だったか、ナディア・ブーランジェのレッスンを受けた高弟の証言が印象に残っています。あれだけ多様な音楽家を育てながら、彼女のレッスンはソルフェージュ、和声、対位法、オーケストレーションの型どおりの練習以外はどんなメソッドも使わなかったそうです。今の作曲技法すら信じていなかったとの事です。ブーランジェ自身、たしか「私は生徒に音楽で話す事が出来る言葉や技術を与えるだけで、私の音楽観を彼らに押し付けないように細心の注意を払っている。音楽は彼らのものだ」みたいなことを言っていたはずです(この本に書いてあったことかどうかは、ちょっと記憶が曖昧。ほかの本だったかも)。そして、彼女が音楽漬けであったことも記憶に残っています。僕は、音楽はなんとなく取り組むのがむずかしくて、聞くなら集中して聴く、練習するならきちんと4時間とか5時間とかきちんと時間をとって練習する、という風にやっていました。でも、ブーランジェは、朝から夜までレッスンをして、疲れて家に帰ってくるとラジオをつけてクラシックを聴くのが趣味だったそうです。それも、さっきの話みたいに、僕とは全く違うレベルで集中して聞いているのでしょうね。

 読んでから20年以上経ってしまったもので、かなり記憶が曖昧になっていますが、何度も読んだ思い出の本です。ほかにも、色んな彼女の考えが書いてあったと思います。音楽家を目指したい方、あるいは音楽で伸び悩んでいる方は、クラシックに限らず、大きな転換点となる1冊かもしれません。一読をおすすめしたいです!

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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
スゴイのが出る!King Crimsonの1970-1972年の間のスタジオとライブ音源!21CD+4BD+2DVD!リハーサルテイクとか、メッチャ聴いてみたい!2万円か、また貯金しないと。。 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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