読み終わった後、ジーンと来てしまいました…。アンヌ隊員の書いたウルトラセブン制作に関する本です。1967-68年制作の特撮テレビ番組「ウルトラセブン」のファンって、日本に何人いるんでしょうか。1000万人はゆうに超える気が…。僕もそのひとりで、今まで何十回見たか分かりません。セリフもそうとう頭に入っていて、僕が役者の喋る前にセリフを喋っちゃうものだから、一緒に観てたかみさんが驚くほど。DVDボックスもサントラも持ってます。そのぐらい好きなので、「セブン」と名のつくものは、つい手に取ってしまうんですよね(^^)。これは去年(2017年)の夏に発行された1冊で、ヒロイン役のアンヌ隊員を演じた、ひし見ゆり子さんが書いた本です。内容は、ひし見さんの幼少時、アンヌ隊員にキャスティングされた経緯、そしてウルトラセブン全話にわたる俳優の立場からの裏話です。
まず、アンヌ隊員の立場からの、撮影時の思い出話が面白かったです。見た事のない写真もけっこう出ていて、そこも良かった(^^)。僕は昔ひし見さんのブログやウルトラセブンのマニアックなサイトなんかを読んでいた事があったので、知っている事もあったんですが、でも忘れてる事もあって、やっぱり面白かったです。第1話で、アンヌが主人公ダンに対して「ダン、あなたの地球がピンチに立たされてるのよ」というセリフをいう所がありますが、あれはその前にアンヌとダンが「あなたの一番好きなものは?」「地球」というやり取りをしていて、そのシーンがカットされたから浮いたセリフになったんだだそうで。
そして、こういうトリビア的な裏話だけでなく、思い出話も面白かったです。いや、実はそっちの方が、あとから効いてきちゃいました。「栄光は誰のために」は千葉に一泊ロケで、旅館でメインゲストの山口暁さんに「おちょこに20杯ビール飲めるか」と煽られて飲んだ。「第四惑星の悪夢」で監督した実相寺昭雄監督に「この話で作戦室のアクリル板に映ったアンヌの顔が、僕のアンヌの一番のお気に入りだ」と言われた。…最初はなんてことない話と思ってたんですが、こういう思い出話をずっと読んでいたら、まるで僕自身がウルトラセブンの製作スタッフとしてリアルタイムで一緒に作ってる気分になってしまいました(^^)。
そして、読んでいるうちに、心を締め付けられるような感慨が。このシーンに出ていたのはロケバスを運転していた○○さん、あの時に一緒に騒いだのは○○さん、このシーンの声はたぶん○○さん…この本の後半で、アンヌさんは、こんな事を書いています。
「当時のスタッフとキャストが、どんどん旅立たれていきます。いつか、セブンに関わった人間は誰もいなくなってしまう。私が書いておかなくちゃ…」。今のアンヌさんは、旦那さんが家に帰って来なくなり、子どもたちもみんな独立して、独居生活になったんだそうです。今、ひし見さんは過去を振り返っています。近づいてきた自分の最期や人生についても考えているでしょう。
その今のアンヌの心境が、自分に移ってしまいました。物心ついた時に、僕はもうウルトラセブンの作戦室にあった赤と青のアレを知っていましたし、「セブン暗殺計画」の不気味な深夜のシーンの記憶もありました。小学生になっても中学に入ってもセブンは観て、そのあと大学、社会人、結婚と、どんどん齢を取っていますが、ウルトラセブンは、あの時のままフィルムに残されていて変わりません。ダンもアンヌも、フィルムの中では齢をとりません。ウルトラセブンが見続けられる限り、ダンもアンヌも若いまま不老不死で永久なのです。でも実際には、この作品を作ってきた人はひとりずついなくなって、いずれはアンヌも、そして観ている僕も…そう思うと、胸がしめつけられるようでした。
でも、だから人生の素晴らしかった時期が輝いて感じられるのかも知れませんね。アンヌさんも、女優以外の色々な事があって今にたどり着いている人生と思います。そして振り返った時に、まだ20代前半で、自分の残り時間なんて考えず前だけ向いて芸能の世界に入って、辛い事も含めて希望に満ちていた自分の人生の1ページとして、ウルトラセブンが輝いて見えたのではないでしょうか。この本で楽しげに、そして時に悲しく過去を振り返るひし見さんの文章を読んで、そんなふうに感じました。
ウルトラセブン好きの方には、大推薦の1冊です!
- 関連記事
-
スポンサーサイト
被ってるかもしれないけど、ひし美ゆり子さんはホント当時のことよく覚えてますよね。
一応1000万人の一人としては「青木隊員はライダーマン」くらいは知ってますが「おちょこで20杯エピソード」は知らなかったな~。「宇宙人役の女優さん達との逸話」ってのも面白そうだけど「ダリーに感染された松坂慶子と対談」は無いっすよね( ´艸`)。
Amazon見たら中古の方が高いんで「買うなら今」なんだろーな・・・。