ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団演奏のモーツァルト交響曲40~41番があまりに素晴らしかったので、ついつい買ってしまったのがこのCD。
39,40,41の3曲がモーツァルトの三大交響曲なんて言われてるもんで、39だけないというのが何となく寂しくてね( ̄ー ̄)。ちなみにこのCD、ホグウッドのモーツァルト交響曲全集から引っこ抜かれて作られた1枚だそうです。
第39番変ホ長調は、典型的な4楽章ソナタ形式の交響曲です。曲想は明るく能天気な宮廷音楽のようで、現代の耳で聞くと退屈きわまりないですが(^^;)、
構造分析しながら聴くとこれが実に緻密かつ無駄のない完璧な構造で、ちょっと鳥肌ものです。このCDの国内盤は、40~41番のCDと違って形式を説明してくれていないもんだから、構造を自分で分析する必要があります(^^;)。それでもがんばって大雑把に分析してみると…第1楽章の形式は序奏付ソナタ。序奏部分で、半音階で下ってくる旋律が色んな音域でこれでもかと繰り返されるんですが、これが最終4楽章に大いに関わってくるので、集中して聴いていないと構造を見失います(^^;)。でも、ものすごく印象的なクロマチックラインなので、記憶のどこかに残ってると思うんですよね、それが15分後ぐらいにまた出てくるから、
推理小説で序盤に出てきた出来事が最後の謎解きに関わってきて伏線が回収されるような快感があります。序章が終わってからも見事な構造で、第1主題は途中で主題を変形させて迫りを作る経過句を用いて綺麗に第2主題へ。第2主題は属調で演奏されて変化を与えられ、盛り上がって一気に展開部へ!…と思いきやリピート(^^;)。展開部はモチーフを和声進行に合わせて色々な声部に移しながら、見事に1主題・2主題の再現部に戻ってfin。再現部1主題に戻った瞬間の快感がすごいですが、この構造を捉まえるのは、記憶力を含めたソルフェージュ能力が少しだけ必要かも。そして1楽章序奏がずっと先の4楽章に生きてくるという…いや~さすがアマデウス、曲想だけ聴いていると明るく能天気な古典派音楽の典型のようですが、構造のこの緻密さ、見事です。ついでに他の楽章もざっと書くと、2楽章はアンダンテの緩徐楽章で2部形式。1部が1主題~2主題、2部が1主題~2主題~1主題。3楽章はメヌエット、4楽章がソナタ…というわけで、典型的な古典派ソナタ形式の交響曲でした。
交響曲38番ニ長調。始まり方が39番とそっくりなので、イントロクイズされるとキツい(^^;)。ついでに曲想も明るい貴族音楽風で39番とけっこう似てますが、こちらは3楽章形式。38番は39~41番のモーツァルト「3大交響曲」にはギリギリ入ってないんですが、35,36,38,39,40,41の「後期6大交響曲」に入ってます。なんで37番が入ってないかというと、37番は大半部分をハイドンの弟が作ったからだそうです。
個人的には、40番と41番の方が曲想的に好みです。現代の耳で聞くと、古典派の音楽はサウンドが安定しすぎてるし、また貴族音楽のような優雅さで音楽に求められているものが現代とマッチしない気がするので、そういう面ではやっぱり面白くないと思ってしまうんですよね。でも、いま聴いてこの音楽を素晴らしく思うのは、曲想ではなく構造。真剣に構造を追うと、細部まで実によく出来ていて見事というほかありません。この物語を追うような古典派音楽の形式的悦楽、真剣に聴き始めると病みつきになっちゃう。いっそモーツァルト交響曲全集、買っちゃおうかな。これだけ見事だと、聴かずに人生を終えるのが悔しくなってきました(^^;)。
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