Miles Davis (Tp), John Coltrane (Tsax), Red Garland (P), Paul Chambers (B), Philly Joe Jones (Dr)
大人の音楽だ…。ハードバップというと、どこを切ってもキンタロー飴な音楽の代表格と聴く前は思ってしまうんですが、実際に聴くと素晴らしいものが結構あって、これもそんな1枚でした。ちょっとしたことだと思うんですが、起承転結の作り方が実に音楽的で、ソロまわしてるだけなんて甘いもんじゃないところが素晴らしい(^^)。この頃のマイルス・クインテットの演奏って、火の出るような爆発力ある音楽じゃなくって、エレガントさを失わない感じ。例えば、レッド・ガーランドのテンションの挟み方が見事。これ、50年代ですよね…ジャズって、ナイトクラブで演奏されるエンターテイメントな娯楽音楽だったはずですが、そうとは思えないほど和声の進化した音楽なんだなあ、と思い知らされます。そしてその上でラインを作るマイルスのソロの組み立てが見事。1曲目「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」はマイルスの18番ですが、アドリブで作ったとは思えないほど綺麗なライン、しかも起承転結が見事で、実に音楽的な組み立てです。このあたりがクラブ叩きあげなだけじゃなくってジュリアードで学んだ人という感じ、エスプレッシーヴォな音楽の大局的な作り方が分かってるというか、コード・プログレッション的にはコーラスまわすだけの構造なのに、マイルスが作ると、その中で大きな構造をきれいに作るんですよね。自分のソロ番になると勢いよくひたすら音符を埋めるだけのハードバップやフュージョンとは大違い、これこそ音楽だ。あと、マイルスのグループにいたからなのか、コルトレーンも後々ソロの組み立てがすごくうまくなるんですが、この頃はもう一歩かな(^^;)。でも、「When Lights Are Low」のソロあたりは、もうコルトレーン節になってます。 というわけで、40も過ぎると年相応の音楽を聴きたくなるというか、モダンジャズ黄金期の音楽あたりを心地よく感じたりして。一生懸命バンド活動してた頃は、「ハードバップなんてジジイ相手のエンターテイメント演奏して小銭稼ぎなんてやってられっか」みたいな気持ちもあったはずなのに、いま聴くと音楽的な部分がよく聴こえてきて、実によく出来た軽音楽だと思いました。ジャズ、いい!