
ひとつ前の記事に書いたシェーンベルクの
『作曲の基礎技法』を読めるためには、ある程度は楽式が解ってないと読むのがきついはず。というわけで、
クラシックの曲の様式を学びたいなら、最初は絶対にこれ、というほどの鉄板本です!クラシックと書きましたが、ポップスやロックはもとより、ジャズでもフラメンコでもタンゴでも全部これで通用します。なんてったって、それらの音楽はクラシックより楽式がシンプルですからね(^^)。ただしこれは古典派からロマン派という、クラシックの中でも、ある程度楽節で分割しやすい音楽を中心に書かれていて、声部が重層的に絡み合う純粋対位法みたいなのはカノンとフーガのあたりでチョロッと出る程度、12音音楽やセリー音楽は未対応。まあでもそのへんの音楽は、こういう基礎を学んでから学ぶのが順序というもんだと思いますし、そういう超専門分野を学びたい人は、もうこのあたりはとっくに通過してると思うので、問題ないんじゃないかと(^^)。
この本では、
楽式を構成する前の基礎知識が書いてあって、そこがとってもわかりやすい!
動機、小楽節、大楽節、こういう言葉が分からない作曲初心者の人こそ、この本を読むのに適してると思います。そして、ここからが本番、楽式の説明に入ります。基礎として、最初に1部形式、2部形式、3部形式を学んで、そこから本格的な楽式であるソナタとフーガがメインディッシュとしてガッツリ説明。最後にそれ以外の楽式をざっと説明するという構成になっています。
ソナタ形式の分析に取りあげられるのは
ベートーヴェンのピアノソナタで、1番と23番「熱情」。口だけで「こういうのが動機、こういうのが大楽節、こういうのが第1主題、こういうのが展開部…」というんじゃなくって、譜例を示して「ここが動機、この動機とこの動機がこういう関係で4つくっついて大楽節。次のここは経過句…」と具体的に教えてくれるので、異常に分かりやすいです(^^)。ただし、楽譜は抜粋しか掲載されてないし、実際の音を聴いたら書いてある意味がものすごく分かりやすくなるので、出来れば別途CDを自分で用意できると、なお捗るんじゃないかと。僕は、ベートーヴェンのピアノソナタの楽譜を持っていたので、それを見て演奏しながら勉強していました。説明が丁寧なので、メッチャわかりやすかったです。
フーガの分析に取りあげられるのは、
バッハの平均律クラヴィーア曲集1巻の11番と16番のフーガ部分(平均律クラヴィーア曲集はプレリュードとフーガが常に一対となって書かれています)。フーガの説明はここでは省きますが、あの旋律の複雑なつづれ織りをすごく分かりやすく説明してくれてます。この本で対位法やカノンやフーガの作曲を出来るようになるかというとそれは難しいですが、入門編としてはすごく分かりやすくていいです(^^)。フーガを学んだことがなかったころの僕にとっては、メッチャありがたかったです。
この本、クラシック以外のジャンルの人も、作曲をしないプレイヤーも、音楽やるならみんな必読だと僕は思ってます。というのは…たとえばジャズを例にとると、
マイルス・デイビスのアドリブって、めっちゃよく出来てるじゃないですか。あれってアドリブと言えどその瞬間に作曲しているのであって、その構造化がこの本に書いてあるような主題の処理や展開を行なってるからなんですよね。つまり、楽式をマイルスはどこかで学んだはずなのです(多分ジュリアード音楽院)。ロックの曲でも、たた3回繰り返して終わる人と、同じ3回繰り返しでもそれを劇的に出来る人っているじゃないですか。あれも楽式論が入ってるかどうかの差だと僕は思ってます。というわけで、基本的な和声が終わって、いざ作曲に進みたい人に、超おススメの1冊です。作曲科に行った人はスルーでいいかも知れませんが、演奏を専攻したけど作曲もしてみたい人、独学で音楽を学んでいる人なんかは、
ロックでもクラシックでもジャズでも、作曲したいなら読んでないなんて許されないほど鉄板の一冊じゃないかと。
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