
僕にとっての
ヴィヴァルディは協奏曲の作曲家。実際、500曲近い協奏曲を書いてます。超有名な「
四季」は作品8の中の一部ですが、
ヴィヴァルディと言ってもうひとつ有名な作品をあげろと言われたら、やっぱりこの作品3「調和の幻想」じゃないかと。そしてこのCDの演奏は…
ヴィヴァルディの演奏と言ったらこのアンサンブルというほど一世を風靡したイ・ムジチ合奏団です!!
「調和の幻想」は協奏曲集で、12番まであります。それぞれ3~5楽章ぐらいで出来ていて、「4つのヴァイオリンのための」とか「2つのヴァイオリンとチェロのための」なんていう副題がついていて、曲ごとに形が変わります。そんな嗜好を凝らしているからか、
アンサンブル的には「四季」よりもこっちの方が完成度が上に感じるほどなのでした。
いずれも、通奏低音つきの協奏曲です。でも、古典派やロマン派の時代の協奏曲みたいに独奏楽器のスーパープレイが聴ける感じじゃなくって、独奏楽器と他の弦&通奏低音が協奏して調和してる感じ。とても調和に優れる美しい音楽でした。
そして、作曲上でとにかく耳につくのは、同じフレーズが調を代えて何度も出てくる手法。特にソロ楽器の見せ場で、やたらに出てきます。バロック協奏曲でよく聴かれるこれ、「
リトルネッロ形式」といって、ヴィヴァルディが開発した技法らしいです。
曲の中で個人的なお気に入りは11番。長調より短調、高音より低音、アップテンポよりスローテンポの方が音楽は深みを増す…という単純な法則にやられただけもしれませんが(^^;)。あ、あと、10番は知ってました。これをバッハが編曲して「4台のチェンバロのための協奏曲」になったんですよね。バッハもヨーロッパ中に名を馳せていたヴィヴァルディを研究してたんだなあ。
ただ、思う事もありまして…僕が昔聴いていたバッハのブランデンブルグ協奏曲もこんな感じだったので、僕はずっと、バロック期の協奏曲というのはこういう優美な音楽なんだと思ってました。でも最近、独奏楽器が思いっきりガシガシ弾いてるブランデンブルグ協奏曲とか、優雅というよりサクサクと楽しげに演奏するヴィヴァルディの「
和声と創意への試み」とかを聴きまして、もしかするとヴィヴァルディを一躍人気作曲家に押し上げたイ・ムジチ合奏団のこの演奏とか、20世紀のバロックの協奏曲の演奏が軒並みアンサンブル重視の演奏をしたもんだから、それが一般的になってしまったんじゃないかとも思いました。これってモーツァルトのピアノ協奏曲にも言えて、カデンツァなんか昔は「おらあ、俺の破壊力抜群の即興演奏を聴けええ!!」っていうジャジーな見せ場だったはずなのに、今は誰かが演奏したカデンツァをコピーして丁寧に演奏しちゃったりしますよね。今のクラシックの演奏家って、スコアを見事に音にする訓練はしますが、即興演奏する訓練はあんまり受けてないし、まして通奏低音の上で縦横無尽に迫力ある即興演奏なんてできないから、必然的にこうなっちゃったのかも。あ、でも、だからイ・ムジチの優雅な演奏が悪いというんじゃなくて、こういうのもいいけど、これはあくまで可能性のひとつであって、これだけが正解じゃないという事は覚えておきたいな、と思ったという事です。
大バッハと同じように、ヴィヴァルディも18~19世紀には忘れられた作曲家だったそうです。そのリバイバルにひと役買ったのがイ・ムジチ楽団で、70年代のヴィヴァルディ・リバイバル最大の立役者はこの楽団。いろんな演奏があっていいけど、ヴィヴァルディを聴くならやっぱりイ・ムジチ合奏団の演奏は最初に聴いておきたい演奏だよな…と月並みな事を思ったりもして(^^)。
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