
日本のキングレコードが出している「世界民族音楽大集成」は、フランスのOCORAという民族音楽レーベル原盤のものだけと思ってたんですが、このCDは日本人が録音してるみたいなので、キング原盤かも。シリアといって僕がイメージするのは、隣国イスラエルとの緊張関係、中東きっての軍事国家、そして2011年からの内戦状態(シリア騒乱)あたりです。シリア騒乱は、僕なんかではよく分からないぐらいに複雑なようで、ザックリいうと現政権と反対勢力の衝突、イスラエルとの衝突、シーア派寄りの現政権と国民の多数派であるスンニー派の衝突、クルド民族の扱いに対する隣国トルコとの対立、などのようです。でもこういうのって、僕ら外国の市民に届く情報なんて偏向報道だったりする事もあるので、深く調べないと分からないですよね。もっとちゃんと
ゴルゴ13を読まないと(゚∀゚*)エヘヘ。
すごく意外に感じたのは、
シリアってシーア派が現政権だというので、イスラムの戒律に忠実な国家かと思ってたんですが、なんとシリア正教なんて言うキリスト教の一派まであるみたい。このCDには正教系の伴奏つき合唱まで入ってました。しかも伴奏が電子オルガン。この電子オルガンの音が70年代の日本のテレビドラマで使われていたような音なんです。そして、旋法が部分的にマカーム的(^^;)。そんな土着化した正教ミサがあるんですね、これは驚きました。
とはいえ、やっぱり主宗教はイスラムみたいで、このCDにはアザーンとジクルが入ってました。イスラムでは1日5回礼拝をしますが、
アザーンは礼拝の時間になると、寺院から礼拝を呼びかけるために聴こえてくる無伴奏合唱的な呼びかけ。ひとりのセリフを複数の人が斉唱する形式でした。タヒチの宗教もヴ―ドゥーも西アフリカの呪術師も同じ形式でしたが、それだけ一般的な合唱の形式なのかも。
一方の
ジクルは、イスラム神秘派が行うもので、集団で神の名を繰り返し唱えるものです。これが強烈、驚きました。呪文のように唱えつつ、それがどんどん高揚していくんですが、これは聴いてるとトランス状態に入ってしまいそう。実際、ジクルでは忘我の境地に入って体を激しくゆすったりもするそうです。このCDは恐らく抜粋ですが、もしフルで入ってたら凄かったかも。。

この3つの宗教音楽以外のセレクトがかなり雑なのがこのCDの特徴で(^^)、逆にいうと実際のシリアの音楽状況をリアルに伝えているのかも。もし外国人が日本の音楽のオムニバスCDをつくったら、箏曲に尺八に琵琶に三味線に…みたいなCDになる気がしませんか?でも、そういう中に昭和歌謡や演歌や民謡やノイズミュージックやAKBがチャンポンで入ってたら、けっこうリアルじゃないかと (^^)。そんなわけで、他にはPAされた歌舞団のアラビア音楽だったり、
カーヌーン(チター属の楽器)や
ナーイ(尺八っぽい音のする管楽器)の
タクシーム(即興演奏)だったり、アレッポの民謡だったり、果てはシリアの古典音楽の授業だったり。中東音楽の微分音程を出せるようにしたフェンダーのストラトを改造したギターの演奏なんてものまで。それにしても、中東の音楽のタクシームは本当に見事でした。システムが西洋音楽と違うので、聴いていて「どうやってるんだ、これ」と驚くことがしばしば。そういえば、
『音楽の原理』に中東の音楽の演奏システムについて書いてあったな、あとでまた読んでみよう(^^)。。
音楽自体はイスラムの宗教音楽と中東音楽でしたが、エレキギター使ったりPAで音を大きくしたり、細かい所に意外と西洋化が入り込んでるんだなと思いました。そういえば昔、アルカイダのウサーマ・ビン・ラディンがGショックを着けていたな…。僕は中東の音楽でつまらないと思った経験はほとんどないんですが、これもまた素晴らしい音楽でした!!
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