
この映画を観ようと思った事は何度もあったんですが、監督が五社英雄さんという所に引っかかって、いままで見ずじまい。五社さんの映画はいくつか見た事があったんですが、文芸作のようなたたずまいはしてるけど結局は女優のヌードが売りのポルノにしか思えなくて、つまらなく感じてたのです。映画自体も、別に深いとは思えなかったんですよね。というわけで、僕としては30年越しの初トライの映画でした!
この映画といえば女優の夏目雅子さん。僕は、
鬼龍院花子=夏目雅子だとずっと思っていたんですが、違った(^^;)。。次に、仮に夏目雅子さんが鬼龍院花子じゃないにしても、
主役は鬼龍院花子だと思ってたのに、これも違った。夏目さん演じる役は、物語上は狂言回しに近い位置でした。さらに、当の鬼龍院花子はほとんど登場しないという(^^;)。でもここは「鬼龍院一家の盛衰」という意味のタイトルという意味で、逆に深い感じで良かったかも。あと、良い意味で裏切られた点は、五社監督なので無意味なエロシーン満載かと思ってたけど、そういう事はなくって、プロが作っただけの事はある質の高い映画だったところ。いや~先入観というのは恐ろしいですね。裏切られて正解というめずらしいパターンでした。
何より面白かったのは、映画の内容の前に、大正から昭和にかけての文化の社会科見学ができたところでした。やくざの親分さんの家の構造とか、子分さんたちはその家でどういう生活をしているかとか、妾たちが本妻と一緒に住んでいる(!)とか、当時のファッションや風景とか、今の日本とは風景も風習もあまりにちがう別世界。おかみさんは、親分が出掛ける時に、石を打ち合わせる「切り火」を本当にやるんですね。あ、あと、日本の闘犬をこの映画ではじめて見たんですが、これがすごかった!メッチャ激しく噛み殺しあいます、闘犬が禁止になるのも分かるわ…。こういう社会科見学的な楽しさが、なにより一番面白かったです。
そして、役者さんやスタッフの方がみんなプロでした。仲代さんや夏目さんや岩下志麻さんの演技がとてもいいので、安心して身を任せる事が出来て映画に入り込む事が出来ました。同じ事がカメラワークや構図やセットの作りなんかにも言えて、映画スタジオ内のスタッフさんたちのプロフェッショナル具合の高さに驚かされました。こういう所は、テレビ局主導や制作委員会形式で作られる事が多くなった今の日本映画とはレベルが段違いでした。でも、プロじゃない人の方が面白いものを作ったりすることがあるのが、映画や音楽のむずかしい所ですね。
映画の本筋以外の所ばかりに感心してしまって、明らかにこの映画の正しい観方をしていないですが、僕にとってはそういう映画だったのかも。もう一回みたいとはおもわないけど、1度は見ておいて良かったと思えた映画でした。
- 関連記事
-
スポンサーサイト