今年もお世話になりました!今年はブログの更新ペースがあがりました。仕事が少なくてね…というわけじゃなくって、今までのペースでレビューを書いていたら、死ぬまでにうちにあるレコードや本のレビューが終わらない事が判明したから。本は読みかえせないものの方が圧倒的に多そうだから半ばあきらめてます(^^;)。そんなわけで、今年はベスト10に収まりきらず、ベスト15になってしまいましたが、この15枚は外せない!というわけで、片っ端から行きます!
第15位 デケデケデケデケ(ドラムロールの音)… 『Eric Clapton / E.C. Was Here』 エリック・クラプトンのブルース・アルバムです。手を抜きまくりのポップスアルバム群は大嫌いなクラプトンのレコードですが、ブルースやらせるとヤバいです。好き嫌い以前に気合いの入り方が全然違います。僕がクラプトンのソロLPで1枚だけ推薦しろと言われたら、間違いなくこれ!
第14位『Public Image Ltd. / First Issue』 パンク以上にパンクで過激。ニューウェーブという音楽が、デジタルで単純なロックと思っていたのが、このアルバムを聴いて豹変しました。セックス・ピストルズにもクラッシュにもあまり心の動かなかった僕が、これにはやられました(^^)。詞ではなく、音楽自体がアヴァンギャルド、こういう挑戦的なものってすごく魅かれます!
第13位 デケデケデケデケ… 『Woody Herman And His Orchestra / The 3 Herds』 モダン以前のジャズ・ビッグバンドなんて古くさくて聴いてらんねえよ…な~んて甘く見たら痛い目にあう事必至の見事なジャズです!セカンド・ハードとサード・ハードはほとんどクールジャズ、これがビッグバンドのサウンドなのかと驚くほどのアンサンブルです。こういうものを埋もれさせてはいかんですよね!
第12位 『Cream / Fresh Cream』 クラプトンはあんまり好きじゃないと思ってたのに、クラプトンがらみのアルバムが2枚も入ってしまうとは、やっぱりすごい人なのかなあ…な~んていって、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーの生涯のベスト・パフォーマンスのひとつであろうというこのアルバムの中で、クラプトンはほとんど子ども扱いなんですけどね(^^;)。長いロックの歴史の中で十指に入るだろう強烈なパフォーマンス、これは熱かったです!
第11位 『Jimi Hendrix Experience / Radio One』 ロックが続きます(^^)。若い頃は本当にロックが好きだったんだなあと懐かしくなりますね~。ジミヘンは、アルバム作るとコンセプトアルバムになり、ライブをやるとアドリブを延々続け…と、どういうジミヘンを聴くかでイメージが全然違いますが、チャートミュージックをものすごい勢いで3分で演奏してぶっとばしてしまう時がいちばん凄いと思います!このCDに入ってる「Killing Floor」は、ロック・ギターのベスト・パフォーマンスのひとつ!
第10位 『サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》、組曲《動物の謝肉祭》 デュトワ指揮』 サン=サーンスはけっこう保守な作曲家で、つまらなく感じる曲が多いと思います。シンフォニー3番もそのひとつと思ってたんですが、僕はこの1枚でオルガン付の印象がまったく変わりました!これは録音が良すぎて悶絶ものの1枚、オーディオチェックのためのリファレンスCDとしても使えるレベルの1枚と思います!
第9位 『Amon Düül Ⅱ / PHALLUS DEI』 壮大な宗教曲でもあるサン=サーンスのシンフォニー3番の上にサイケで暴力的でドラッグなジャーマン・ロックを選んでいいのか…こっちの方が好きなんだから仕方ないっすね(^^)。作曲ばかり気にするより、狂ったように演奏し、そしてそれを作曲で制御していくというやり方は、音楽としてはこっちの方が正しいんじゃないかと。演奏が下手なのはロックだから仕方なし、それでも音楽の本質をついているところは本当にスバラシイ。ロックが好きなら、いつまでもチャート音楽追ってないで、いつかはジャーマン・ロックに入らないと嘘だと僕は思ってます(^^)。
第8位 『マーラー:交響曲第8番《千人の交響曲》 クーベリック指揮、バイエルン放送交響楽団』 もう、これは音楽じゃないです。やろうとしている事が音楽を超えてます。手塚治虫の書いた「火の鳥」が漫画であって漫画でないようなもの。音楽を通して音楽でないものを扱った偉大すぎる作品。ここまで褒めておいてなぜ8位かというと、これ以上の「千人の交響曲」を僕は知っているから。でも、だからクーベリック指揮のこの音楽が悪いという事にはなりません。「千人の交響曲」は、テキストを合わせて、死ぬまでに1度は体験すべきと思います。この意味を理解する事が、人間にとって重要な事だと思います。
第7位 『七世芳村伊十郎 / 京鹿子娘道成寺』 マーラーの「千人の交響曲」が示しているものを理解する事は、キリスト教世界の核心を知るという意味でもあって、それを知る事は自分が救われるという意味でもあると思ってます。それを知った上で、江戸時代の三味線音楽の詩に感じられる鯔背を分かるというものが大人というもの(^^)。あんまりマジなばかりだと人生つかれるから、粋で鯔背ぐらいがちょうどいいんじゃないかと。江戸時代の小唄・端唄・長唄に優るエロかっこいい歌は、世界のどこにも存在しないと確信しております(^^)。
第6位 『SANTANA / Caravanserai』 ラテン音楽の躍動の極致であり、どこまでいっても歌謡形式の範囲でチョコチョコやってるだけだったロックに劇的構造を与えた、ロック究極の1枚!若い頃から死ぬほど繰り返し聴き続けてますが、いまだに聴くと血が沸騰してくるようです!これを超えるロックって、キング・クリムゾンとかザッパとかタンジェリン・ドリームとかアレアとか、もう数えるほどしかいないんじゃないかと。これはロック・ファン以外の人にも聴いて欲しい1枚です!
第5位 『チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》 フルトヴェングラー指揮、ベルリンフィル』 テニスでも野球でもサッカーでも、昔より今の方がうまいしレベルが高いと思うじゃないですか。ところが、音楽に関してはあながちそうとは言えない事を痛感させられた1枚です。指が速く動くとか、正確に演奏できるとか、そういうところは確かに今の方が上かも知れませんが、音楽の胆とは何なのかを思い知らされるような演奏、感動しました。フルトヴェングラー&ベルリンフィルは、オーケストラ音楽の伝説ですので、聴いたことのない方はぜひ!録音もヤバいほどいいです(音がいいんじゃなくて、立体感がヤバい)。
第4位 『シリアの宗教音楽 Syrie: Muezzins d’Alep Chants religieux de Islam』 僕、クラシックに次いでいっぱい持ってるCDは民族音楽なんですが、民族音楽の中で特に好きなのは芸術音楽と宗教音楽なんです。そんなもの、若い頃はもちろん知らなかったし好きでもなかったんですが、こういう音楽を知るようになって、「ああ、音楽って、こういう使われ方をした時に、いちばん人間に役立つものになるんじゃないかな」と思えて、全身が震えるほどに打ちのめされました。今年、シリアは日本でも話題になりましたが、シリアに残っている文化が何を示すものなのか、その一端を肌で感じられる音楽と思います。これは好きとか嫌いという次元を超えた音じゃないかと。カルチュラル・スタディーのためにも、大人なら聴いておきたい1枚。
番外編:音楽以外でよかったもの コミック『迷走王ボーダー』 TVドラマ『探偵物語』 ベスト3の前に、音楽以外で良かったものを2つほど!『迷走王ボーダー』は漫画ですが、そのへんの小説や映画よりよほどすごい内容、どう生きるかの答えを与えてくれるような漫画。松田優作主演のTVドラマ『探偵物語』はコメディですが、笑わせてくれてありがとうという感じ、ちょっとだけ入っている感動要素やハードボイルドなところも、ギャグが面白いだけに際だって感じました(^^)。
第3位 『富樫雅彦+佐藤允彦 / カイロス』 いよいよベスト3!日本のフリージャズのライブ録音大名盤を、ノーカット収録に拡張してタイトルを改めた1枚です。ジャズって高度な音楽だと思われがちですが、基本はお客さんを喜ばせるポピュラー音楽であって、やっぱりどこかで「こんなもんだよな」となってしまいがち。ところが、これはやろうとしている事がそういうエンターテイメントと根本から違う、演奏が最終的に辿りつくところってエンターテイメントとか技術とかではなくって、こういう所だろうというもの。響きもジャズを超えて明らかに同時代音楽の最前線に迫ったもので、音楽の本質を目指したジャズが日本にあった事を証明する1枚だと思います。
第2位 『メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ムター(vln)、カラヤン指揮ベルリンフィル』 このCDで心が震えたのは、ブルッフの方です。まず、曲が神。そして、演奏が神。特にムターのヴァイオリンは、楽器が身体と一体になって歌いまくってる感じがすごかった!この次元で演奏できる人間って、どれぐらいいるんだろうかというほどに躍動していました。音楽以外の方法で、こういう感動を覚えるのって不可能なんじゃないか、というほどの素晴らしさでした。この種の感動って、言葉で書けないところがなんとももどかしいっす。。
第1位 『シュニトケ:交響曲第3番 Eri Klas (cond.), Stockholm Philharmonic Orch.』 シュニトケの狙いは他のところにあったと思うんですが、僕個人はこの圧倒的なサウンドにやられた。。人がAを伝えようとしている所で、僕はBに感動しているという齟齬が起きているわけですが、でもその感動が今年聴いた200枚以上のアルバムのどれよりも大きい場合はどうしたらよいんでしょう…1位にするしかない、それぐらい驚異の音楽でした。現代音楽の駄目だなと思うところは、ニッチなところの研究合戦になってる部分だと思うんですが、素晴らしいと思うものに関しては、そんなニッチな事なんてやってない、真正面から音楽の一番大事なところをずどんと貫いていると思うのです。3番を1位にしましたが、実は1番も2番もすごいんです(^^)。
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こうして振り返ると、例年になくクラシックのランクインが多かったです。単純に、今年は例年よりもクラシックのレコードを多く聴いたからなのかな?実は、僕が持ってるレコードでいちばん量が多いのってクラシックなんですよね(^^)。クラシックや民族音楽のレビューを書くと誰も絡んでくれなくなるのが悲しいですが、まあそれは仕方がないですね、悪い音楽という事ではなくて、聴いてる人が少ないというだけの事ですから。自分がいいと思ったものはいろんな方々に積極的に紹介していければと思います。もしクラシックや民音を全然聴かない人が「あ、面白そうだな」な~んて思ってくれるきっかけになってくれたら、これに勝る喜びはないですし(^^)。今年も本当にお世話になりました。それではみなさん、よいお年を!!
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私はクラシックを
聴かないですからね(笑)
また来年も楽しく生きていきましょう!
ありがとうございます😊