
これはパキスタン北部にあるカラコルム山地の音楽です。録音は民族音楽学者の小泉文夫さん一行。本当に、人生を民族音楽の調査に費やした人でした。すごいなあ。
前半は、中国国境近くにある
フンザと
ギルギットという地の音楽。音楽と関係ないですが、カラコルム山脈のこの場所、山と湖の景観がすごいです!!
地理的にもそうなので、当たり前といえば当たり前なんですが、インド寄りのパキスタンにある音楽に比べると、もう少しアフガニスタンとか、中央アジア寄りの音楽に近づいていると感じました。
アフガン・ルバーブ(西アジアの擦弦楽器のルバーブじゃなくて、パキスタンやアフガニスタンにある撥弦楽器のルバーブ)にしてもシタールにしても、
古典芸術音楽という感じじゃなくて民俗音楽っぽい演奏でした。音楽専従者の演奏じゃない普通に生活している人が演奏してる感じだし、楽式はシンプルだし、器楽じゃなくて常に歌がついてるから、そう感じるのかもしれません。4曲目の「ビターン」という民間信仰のための音楽や、5曲目のポロ競技(ポロって英国のスポーツかと思いきや、元はフンザ・ギルギット地方なんだそうで)のための音楽まで来ると、ダラブッカみたいな打楽器の音に笛がピロピロ鳴っているので、インド音楽よりもトルコ音楽の方に圧倒的に近い印象を受けました。そして、このトルコ寄りの音楽がカッコい!!

後半は、カラコルム山脈の向こうは中国のウイグル自治区というバルティスタン地方の音楽。
バルティスタンはK2の真南という事で、ものすごい山岳地帯。ここに住んでるとか、僕には信じられません。どういう人生になるんだろうか。でも、これまた景観がものすごいので、ぜひネットで画像検索してみてください!
そして、
バルティスタン地方になると、音楽的には完全にトルコ系。
ズルナ(チャルメラみたいな音のするトルコの楽器)に
ダラブッカみたいな太鼓の音です。7曲目にハリーブという旋法&楽曲が入ってましたが、こう聴くとラーガやマカームみたいなのを想像するかと思いますが、もっとフォームのルーズな民俗音楽っぽく聴こえました。他に入っていた民謡は、楽器はトルコっぽいんですが、音楽は…全然違う土地なんですが、アンデスあたりの音楽に似てました。文化的につながりがあるはずがないので、太鼓ドコドコ笛ピロピロで盆踊りみたいな音楽やると、どうしても似てくるという事かも。でもこの民謡、村の仕事歌みたいなものではなくて、王宮の儀式音楽なんだそうで。
パキスタンの音楽というと、ほとんどインド音楽の延長だと思ってたんですが、
カラコルム山脈まで来ると音楽文化的にはかなりトルコ色が強くなるんですね。面白いのは、隣接してる中国の色がもっと混じってきても良さそうなもんですが、それがまったくないのが面白かったです。ヒマラヤ山脈とつながってるカラコルム山脈の壁は厚いという事でしょうか。このへんの土地は、山で他の文化が入って来なかったり、古い文化が生きていたり、不思議な言語を持っていたりして、シルクロード随一の秘境と言われてるそうです。そう言われるだけのことはある、秘境めいた魅力満載の民俗音楽でした!
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