
もともとは一緒の国だったインドとパキスタンが分裂したのは、宗教差だったそうです。インドがヒンズー教優勢、パキスタンがイスラム教優勢。イスラム教はスンニー派もシーア派も音楽を、人をダメにする娯楽として敬遠する傾向があります。でも、密教系のイスラム教の中にはスーフィーというイスラム神秘主義があって、ここでは音楽を神秘体験に入っていく道具として使う時があります。トルコにあるメヴレヴィー教団の旋回舞踊なんかは有名ですが、
パキスタンのチシュティー教団のカッワーリ―という音楽と詩もスーフィーの音楽として有名。これは、
ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンを中心としたパーティーによるカッワーリ―です。
なにせ無我の境地まで人を連れていくための音楽なので、トランス感がすごい!陶酔といっても、静かな音がえんえんと続いて眠くなっていく系とは反対で、
同じ音型をくりかえしながらどんどん速くなって、意識がものすごく高揚していく感じでした。感覚的には、
バリ島のケチャみたいな、音の波状攻撃に呑みこまれていくのと似ているかな?しかも、イスラム神秘主義と言ってもインドの音楽文化とシンクレティズムを起こしてるので、インドのラーガがトルコの旋回舞踊のように短い時間であっという間に高揚していくんです。いや~これはすごかった!!
音楽部分は、タブラとハルモニウムがパッと耳につく楽器で、これに主導する文言を歌う人とコーラス(単声)、それに手拍子がつく感じ。メンバーは、このCDの写真で見ると、10人でした。歌(というより、たぶん宗教的な詩)が中心で、その歌い方は
ガザルや
ドゥルパドに共通するものを感じました。最初はハルモニウムだけの伴奏でリーダー(多分アリ・ハーン)のルバートでのゆったりした朗誦。これにリズムが入ってきてイン・テンポになり、真ん中の詩と、うしろでなんでも繰り返されるコーラスが掛け合いのようになって、それがどんどんアッチェルしていって…みたいな感じです。盛り上がってきた時の、言葉を伴わないインプロヴィゼーションみたいなヴォーカリーズをアリ・ハーンが歌う部分があるんですが、そこがめっちゃカッコよかった!
詩は、たとえばこんな感じ。「たどりついた場所がどこなのか、私には分からない。そこは仮の宿だったのか…」う~んいかにも意味深な感じです、やっぱり宗教音楽なんですね。
このCDは、もともとは分売されていたものを2枚組にして再発したものです。というわけで、新たに買うなら2枚組セットのものの方が効率がいいと思いますが、どちらか1枚を買うなら、1曲目の冒頭の朗誦部分が死ぬほどカッコいい第2集がオススメです!
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