セッション色の強いデビュー作に比べて、こっちは曲作りにかなり力が入ってます。曲想も前作と違って、ゴーゴークラブで演奏しているハコバン的な音楽が、フォークをベースにしたサイケバンドのように変貌。音楽よりもセリフが多いので、気になるのは詞です。例えば、ウッドストックで演奏した「I-Feel-Like-I'm-Fixin'-To-Die Rag」。この曲、演奏はサーカスのバンド演奏みたいで楽しげですが、この曲以外はみんなしっとりと落ち着いた、場合によってはダークな曲です。「I-Feel~」にしても、有名なサビ「One, two, three, what are we fighting for?」は、訳せば「なんのために俺たちは戦ってるんだ?」。これってベトナム戦争の事ですよね。それだけ聴いても若い頃は「戦争反対なんだ」ぐらいなもんでピンとこなかったんですが、今、もしこういう歌が日本で歌われたらどうなるかと想像すると、なかなか大事な事をやってるんじゃないかと。原発問題でも9条でも極東地域の外交問題でも何でもいいですが、もしそういう事について歌ったら、それが左寄りの内容であれ右寄りの内容であれ、反対側のごく一部の人が、論理的な反論をするでもなく汚い言葉でグチャグチャに批判、それを見た大半の人が「あ、これはアンタッチャブルな話題だな」と押し黙ってサイレントマジョリティーと化して、事実を調べる事も正しい道を考えるでも行動する事もせず、場合によってはメッセージを投げ入れたミュージシャンが「アンタッチャブルなネタを商売に利用してる」なんて言われたりまでしてオシマイではないでしょうか。正しいかどうかはともあれ、市民やミュージシャンがこういう事で声をあげる力を持っていて、またそれに市民が反応する所が、合衆国やフランスの素晴らしい所だと思います。