大バッハって膨大な数の曲を書いてるので、最初は何から聴いて良いのか分かりませんでした。19世紀に「バッハ全集」という楽譜が出版された時は、一部の大作曲家たちはそれをバイブルのように研究したそうですが、全集をすべて揃えると46巻!もしすべての曲を研究なり演奏なりしていたら、それだけで人生終了ですね(^^;)。そんなわけで、バッハの名曲はある程度チョイスして聴かざるを得ませんが、それでも無伴奏ヴァイオリンはマストの1曲に入ってくるんじゃないかと。僕が大学生だった80年代後半ごろまでは、ヘンリク・シェリングの無伴奏ヴァイオリンがこの曲の最高峰だなんて言われていました。このCDは1967年録音ですが、たしかシェリングはこの前にもバッハの無伴奏ヴァイオリンの録音をしてるはず。そっちを推す人もいますが、残念ながら僕は聴いてません。
僕がヴァイオリン独奏を全曲通して聴いたきっかけは、学校で友人のヴァイオリニストが練習してた事でした。この曲集にはパルティータ2番のシャコンヌとか、有名な曲がたくさん入ってますが、彼が練習してたのはソナタ1番の2楽章。最初僕は、「あ、バロックだから2台ヴァイオリンなんだな」と思って聴いてたんですが、ふと見ると、なんとひとりで演奏してるではありませんか!これ、ヴァイオリン独奏なのに和音つき2声のフーガだったのです(゚д゙)スゲエ。クラシックギターのひとり多重奏も驚異ですが、ヴァイオリンでこんな事が出来てしまうとは衝撃でした。そしてこの超絶的な曲が作曲されたのが1720年…う~ん
300年近くたった今でも、これだけ見事なカノン部分を持つヴァイオリン独奏曲ってないんじゃないかなあ。
ソナタという言葉は、
ベートーヴェン以降はだいたい同じ意味で使われるので混乱せずに済みますが、それ以前は違う意味で使われる事があるので注意が必要。
バロック期には「器楽曲」とか「多楽章を持つ器楽曲」ぐらいの意味で、この曲は後者の意味かな?そして、
バロック期のソナタは「教会ソナタ」と「室内ソナタ」なんて分類もあって、前者が緩急緩急で舞曲含まず、後者が急緩急で舞曲含む、みたいな感じだそうです。ちなみに無伴奏ヴァイオリンのソナタ第1番を見ると…アダージョ、アレグロ、シチリアーノ、プレストの4楽章。なるほど、教会ソナタですね(^^)。
それから、パルティータ。
パルティータの元々の意味は変奏曲だったそうですが、主題とか調とかで統一性を持って構成された組曲、みたいな意味に変化していったそうです。
バッハの無伴奏ヴァイオリンの場合、パルティータは調がみな同じなので、なるほどここが統一感になってるんですね。ちなみにソナタは1番から3番もまで、どれも楽章によって調が変わってます。
というわけで、
この曲集のものすごさは、フーガ3曲を含む当時のバッハが使っていた作曲様式をそのままヴァイオリン独奏に移したところ。当然、演奏はむっちゃ大変だと思いますが、演奏者の苦労も知らずに無責任に聴くだけの僕としては、その演奏を聴いて「すっげ~」みたいにはしゃぐだけ、みたいな(^^)。僕的には、弦楽器で本当にすごい演奏って、速弾きとかなんとかじゃなくって、2声や3声や伴奏つきやバスつきといったひとり多重奏です。もう、これをやられるとそれだけで悶絶しちゃいます。
あ、そうそう、オーケストラや室内楽を聴いてると意外と気づきませんが、ヴァイオリンって独奏で聴くと、音がかなりノイズっぽいというかヒステリックです。ついでに、かなりピッチが怪しい楽器です。そりゃそうですよね、フレットレスなんですから。それを逆手にとっての事か、無伴奏ヴァイオリンって、かなり歌うように演奏するものが多いです。それって、このシェリングの名演をみんな真似したからそうなったのかなあ…な~んて勝手に想像してます。クレーメルあたりはどうやって演奏してるのかなあ。
というわけで、クラシックを聴こうと思ったらまず外せない超重要曲「バッハの無伴奏ヴァイオリン」の、歴史的名演だと思います!
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