池辺先生の管弦楽作品集です!池辺さんの交響曲2番が心に響いた事がありまして、それを収録したCDはないものかと探して行きついたCDがこれでした。フォンテックやカメラータって、いい仕事するレーベルだなあ。
・交響曲第2番《トライアス》(1979)
日本フィルハーモニー
・チェロとオーケストラのための協奏曲《木に同じく》(1996)
向山佳絵子(cello)、大阪センチュリー交響楽団
・フルートとオーケストラのための協奏曲《砂の上に対座して》(2003)
小泉浩(flute)、日本フィルハーモニー
「交響曲第2番《トライアス》」。印象だけを言えば、伝統的な西洋音楽の長的重力と点描手法が併存していて、それでいて頭でっかちでセコセコした所がなくダイナミック!骨格となっている部分はセリーではなく、オブリや対位法的な所があったりするので、しいていえばメシアンや新古典あたりに近いものを感じました。一方で、うしろで弦がかすかに反復音型を繰り返していたり、それは大構造を作っている骨格と少し違っていたりするので、こういう別の改装で成立しているものが堆積して(池辺先生が言うには3つ)、「トライアス」というのだそうで。僕的には、池辺先生のシンフォニーと言えばこの曲です!
「チェロとオーケストラのための協奏曲《木に同じく》」。僕の池辺先生の音楽のイメージって、1に
メシアン2に武満、3が新古典などの西洋クラシック音楽の伝統で、その上に反復やゆらぎなどのポストモダン期の作風が重なって…みたいな感じです。この曲はまさにそれで、その全部が重なって感じます。7つのパートに分かれていますが、けっこう連続しているので、音楽が一気に流れていく感じでした。う~んこれもよく出来た作品だなあ。でも、ちょっと器用すぎて頭がよすぎて、僕程度の音楽能力の人間にとってはシーンの移り変わりが多くて複雑すぎて掴み切れませんでした(^^;)>。でも、ものすごく良く出来ているんだろうな、というのだけは感じました。
「フルートとオーケストラのための協奏曲《砂の上に対座して》」。匂いとしては、
武満さんのノーヴェンバー・ステップスみたい。弦のサウンドと、ソロ楽器への絡ませ方がそう感じるんでしょうね。これも素晴らしいです…が、なんか60年代の日本の前衛の模倣にしか感じない気がしたのも事実でした。フルートも死ぬほどうまい。うまいんですが、もっと鬼気迫る演奏をして欲しい…。
池辺先生に限らず、
日本でも海外でも、ポストモダン期の作曲家の作品を聴いていて思うのは、ポリシーに欠けるという事と、ポリシーを持っていてもそれがあんまり音楽の胆じゃないようなところを一生けんめい掘り下げているように思えるところが問題なのかも。AやってBやってCやって、それを混ぜ、新しいものを重ねて…というのは、逆にいうとAとBとCのどれが優れているのかというのをきちんと判定できていないという事なのかも。それを乗り越える場合は、混ぜるんじゃなくて止揚しないといけないと感じました。技法としてはものすごい緻密で、これこそ作曲の職人と感じるんですが、じゃあそれが良いかというと…メシアンや
シェーンベルクや
ノーノや弦カル3~4番前後の
バルトークの音楽にあるような説得力を感じないんですよね。作曲技術としてはプロ中のプロの匠の技、でもそれでやろうとしている事がちょっと…と思ってしまったのでした。でもこんな事、日本の作曲界にいたら、口が割けても言えないよなあ(^^;)。。
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