池辺晋一郎先生、2007年の作品「ギターは耐え、そして希望しつづける」の初録音CDです。下手すると最初で最後の録音になるかも。現代音楽って、初演にして最後の演奏という曲が大量にあるんですよね(^^;)。演奏は同曲の初演演奏者の鈴木大介さんで、これは鈴木さんのソロギター演奏集です。収録曲は、以下の通り。
・セゴビア「光のない練習曲」
・ブリテン「ノクターナル」
・J.S.バッハ「プレリュード、フーガ、アレグロ BWV998」
・池辺晋一郎「ギターは耐え、そして希望しつづける」
・スカルソープ「フロム・カカドゥ」
・ハンス・ハウク「夜明け」
セゴビア「光のない練習曲」は、古いギター曲ってこんな感じのものが多いよな、という感じでした。「禁じられた遊び」とか、ソルの曲とか、こんな感じですよね、みたいな。
ブリテン「ノクターナル」。これはメッチャクチャ好きな曲でして、ブリームとか、色んなギタリストの演奏で、僕はこの曲を聴いた事があります。他の演奏に比べると、可もなく不可もなくという感じかな?全体的に、もうちょっとレガートでいいんじゃないかと思ってしまった。。
バッハ「プレリュード、フーガ、アレグロ BWV998」は、もともとリュート用の曲です。
バッハはリュート曲を7曲書いたと言われていて、その中の1曲です。この曲は山下和仁さんのCD『
J.S.バッハ :リュート組曲(ギター版)
』で聴いた事があって、そっちに比べると演奏が平坦すぎるし、響きの美しさは劣るしというわけで、つまらなかった…バッハなので山下さんだってやたらと歌わせているわけではないんですが、わずかなアゴーギクが生み出す表情があるかないかでこんなに違うものかと思わされてしまいました。
池辺晋一郎「ギターは耐え、そして希望しつづける」。曲は、セゴビアと武満の間みたいな感じで(かなりセゴビア寄り)、ちょっと保守的でつまらないなあ、と思ってしまった(^^;)。僕、このCDを、この曲目当てに、発売当時に新譜で買ったんです。だって、タイトルからして面白そうじゃないですか!それに、初演コンサート観に行くより、CDかった方が安いし(^^)。でも、なんだか委嘱されたからそれっぽい曲を書いてみました、みたいな感じで、ちょっと残念だったなあ。
スカルソープ「フロム・カカドゥ」。スカルソープは1929年生まれのオーストラリア(!)の作曲家。オーストリアじゃないですよ、オーストラリアです。曲は…もしかすると演奏が大人しいからかもしれませんが、ニューエイジ系ギター曲みたいな感じがしました。この曲、もっと暴れるように演奏したらカッコよかったかも。
ハウク「夜明け」。ハウクは1900-67年のスイスの作曲家で、この曲はセゴビアの演奏で有名なんだそうです。これも、古いギター曲ってこんな感じだよな、みたいな感想でした。クラシック・ギター全盛って、セゴビア隆盛からだと思うので、それまでにはまだ曲が揃いきってなかったのかも。
録音は響きすぎずにナチュラル。演奏は、さすが現在の日本人ギタリストのトップレベルのひとり、ノーミスのパーフェクトという感じ。ただ、録音もギターも挑戦がないというか、「意地でもすごいものを作ってやろう」みたいな気迫がないというか、凡庸…。ギターに限らずですが、2000年代以降のクラシックのプレイヤーは、「無難」「怒られたり揚げ足を取られたりしにくい演奏」というあたりのメンタリティで演奏しているみたいで、ひっかかるものが何にもありませんでした。もっと「ここをこういう風にしたいんだ、この演奏を聴いてくれ!」みたいな主張があってもいいと思うんだけどなあ。
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